要点
- 官民協議会は 2024 年 5 月から 2026 年 5 月までに 10 回開かれた。運営要領は協議会を原則非公開とし、公表するのは事務局資料と議事要旨だけで、参加者が提出した資料は原則非公開と定めているA · EV-037
- 10 回で参加者(メーカー、受託者、自治体、金融機関、業界団体など)が発表した資料は 40 件あり、いずれも配付資料ページに掲載されていない。需要推計を行った受託者の発表 2 件も含まれるA · EV-056
- 議事要旨は各回 2 ページ、発言者名を記さない箇条書きで、全 10 回で約 180 項目。事務局が発言にどう応じたかは記載されないA · EV-028, EV-056
- 20GW が初めて資料に載り、取りまとめが座長一任となった第 8 回は、開催時間 1 時間だった。他の回は 1 時間半〜2 時間であるA · EV-056
- 「代替案を並行して検討すべき」「追加で設置できる場所かどうかに留意」「14 円/kWh は一定条件下のもの」「FIT 活用ありきで進まないように」といった慎重な発言は要旨の各回に残っている。それらが戦略本文のどこに反映され、どれが採られなかったのかを示す資料は無いA · CL-029
1. 協議会の仕組み
次世代型太陽電池の導入拡大及び産業競争力強化に向けた官民協議会は、資源エネルギー庁 新エネルギー課を事務局とし、委員(学識者・金融機関の 8 名、2026 年から 7 名)と、企業・団体・自治体からなる協議メンバーで構成されます。第 1 回に配付された運営要領は、検討事項として「次世代型太陽電池の導入目標・価格目標の策定」を挙げ、会議は原則非公開、事務局資料と議事要旨は原則公表、参加者提出資料は原則非公開と定めていますA · EV-037。
この仕組みは、何が公開され何が公開されないかを最初から決めていました。公開されるのは事務局が作った資料と、事務局がまとめた要旨です。協議会の場で誰が何を根拠に述べたかは、要旨の匿名の箇条書きを通してしか分かりません。
2. 10 回の会合
| 回 | 日付 | 開催時間 | 議題 | 公開された事務局資料 | 非公開の参加者資料 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2024-05-29 | 2 時間 | 太陽電池産業の歴史と可能性 | 開催について(運営要領)、資料 2 | NEDO、資源総合システム、太陽光発電技術研究組合(3) |
| 2 | 06-19 | 2 時間 | 社会実装(メーカー 6 社) | なし | アイシン、エネコート、カネカ、積水化学、東芝・東芝 ES、パナソニック HD(6) |
| 3 | 07-26 | 2 時間 | 導入ポテンシャルと施工 | なし | みずほ R&T、BCG、国総研、不動産協会、日建連、住団連、全建総連(7) |
| 4 | 08-20 | 2 時間 | 需要家の視点 | 論点の振り返り、環境省資料 | 東京都、南魚沼市、防衛省、JR 西日本、中部国際空港、JCLP(6) |
| 5 | 08-26 | 2 時間 | 海外、標準化、サプライチェーン | サプライチェーン資料 | BCG、産総研、日本ヨウ素工業会(3) |
| 6 | 09-10 | 2 時間 | ファイナンス・保険、戦略 骨子案 | 骨子案 | 三井住友銀行、あいおいニッセイ同和損保(2) |
| 7 | 10-08 | 1.5 時間 | 戦略 案 | 戦略案 | なし |
| 8 | 11-26 | 1 時間 | 戦略 案(取りまとめ) | 戦略案 | なし |
| 9 | 2025-05-07 | 2 時間 | 動向、事業化、自治体 | 動向資料、自治体の支援制度、環境省資料 | 積水ソーラーフィルム、パナソニック HD、東京都、福島県、愛知県、福岡市、JCLP(7) |
| 10 | 2026-05-20 | 2 時間 | 動向、事業化、業界団体、ガイドライン | 事務局、環境省、国交省、産総研、JPSC、自治体の支援制度 | 積水ソーラーフィルム、パナソニック HD、長州産業、東京都、大阪府、愛知県(6) |
出典: 各回の議事次第・議事要旨A · EV-056。
第 4 回に配付された日程表では、第 6 回(9 月 10 日)で論点の議論を終えて取りまとめに入る 6 回構成でしたA · EV-040。第 7 回と第 8 回は後から加えられた回で、第 7 回で数値欄が伏せ字のまま置かれ、第 8 回で 20GW が入りました(第 1 章)。第 8 回は 9 時から 10 時までの 1 時間で、大臣挨拶、戦略の説明、議論を経て「取りまとめについては髙村座長一任の了承が得られた」と要旨は結んでいますA · EV-046。2 日後の 11 月 28 日に戦略が公表されました。
取りまとめの後、協議会は半年空いて第 9 回(2025 年 5 月)、さらに 1 年空いて第 10 回(2026 年 5 月)が開かれました。第 9 回以降は戦略の見直しではなく、進捗の報告と需要創出の議論が中心です。
3. 要旨に残る発言 — 目標を求める声
発言者名が無いため、以下は「どの立場からの発言か」を要旨の文脈から読める範囲で記します。
目標の設定を求める発言は、第 2 回に現れます。メーカー 6 社の発表の後、「ファイナンスの観点からは、当初のマーケットに加え、長期需要の予見性が必須。政府が長期的な目標を示したほうがよいのではないか」A · EV-039。第 4 回では需要家の発表を受けて「メーカーの量産化への投資判断を考えると、初期だけでなく、中期的に需要を見通す必要がある」、第 7 回では「政策目標は事業者の予見性を高めるものとして重要であり、できるだけ多くの導入が進むような意欲的な目標を、官民で掲げる必要がある」A · EV-043。第 8 回では「2040 年の約 40GW といった導入目標や価格目標の具体的な数値の設定は、特に事業者や投資家にとって予見性を確保するために重要」A · EV-046。
これらに共通するのは、目標の役割を「投資の予見性」に置いていることです。需要がどれだけあるかを確かめるための目標ではなく、供給側が投資を決めるための目標として語られています。事務局資料も第 1 回から「導入目標の策定を通じて官民での需要を喚起」と書いていますA · EV-038。
4. 要旨に残る発言 — 慎重な声
同じ要旨に、前提に注意を促す発言も各回にあります。
| 回 | 発言(要旨の記載) | 論点 |
|---|---|---|
| 2 | 「万が一うまくいかなかった場合のため、代替案を並行して検討すべき」「日射量や寿命の問題など、発電コストを下げるハードルは高い」 | 失敗時の備え、コスト |
| 3 | 「空き地、農地、駐車場、カーポートなどのポテンシャル推計については、ペロブスカイト太陽電池の設置による追加での設置が可能となる場所であるか否かについても、留意が必要」「耐荷重性の低い屋根については、一定程度軽量化されたシリコン型太陽電池との競合も考えられるのではないか」 | 需要推計の母数、シリコンとの競合 |
| 3 | 「コストの低減と大量生産に注力しすぎると、海外製の安価な単結晶型との競合は避けられない」 | 競合 |
| 4 | 「技術開発の進展と需要創出、生産規模の拡大がどのような時間軸で進むかについては見極めながら議論が必要」 | 時間軸 |
| 5 | 「現実的にどの程度コストを低減できるかについても留意しながら販売先を検討すべき」「海外展開を進める際には自立した事業展開すべき」 | コスト、自立 |
| 6 | 「2040 年には現状の試算よりもレベルの高いコスト低減目標を考えるべき」「大規模な需要家負担で支えられ FIT 制度については、活用ありきで進むことのないようにすることが重要。受益と負担の公平性も踏まえ」 | コスト目標、FIT |
| 7 | 「GI 基金で目標として掲げられている 14 円/kWh のコスト目標は一定条件下のものであり」「当初想定していた市場展開ができなかった場合の戦略についても検討すべき」「既存のシリコン太陽電池上への設置も有用である可能性がある」 | 14 円の条件、撤退線 |
| 8 | 「既存のシリコン太陽電池に比べどのような利点があるかについて、今後データを蓄積して更に検証してほしい」「当初の予定通り、事業展開ができなかった場合に、どのように路線変更するかについてもプランを練ることが重要」「FIT/FIP 制度ありきでなく市場原理の中で競争力を持つことを重視すべき」 | 検証、路線変更、FIT |
| 9 | 「追加性の観点から適切に支援対象を絞り込む考えに賛同」「タンデム型については、日本の勝ち筋や今後の市場の広がりは慎重に見極めるべき」「地上設置用途については、技術面での差別化が困難でコスト勝負」 | 補助の絞り込み、タンデム、地上設置 |
出典: 各回議事要旨A · EV-028, EV-054, EV-057。
第 3 回の「追加で設置が可能となる場所かどうか」という指摘は、需要推計の母数に直接関わります。推計は建物種別ごとの面積に「追加で設置できる割合」として設置係数を掛けており(第 1 章)、この係数の根拠は報告書に示されていません。第 7 回の「14 円は一定条件下のもの」は、自立化水準の下限として戦略に書き込まれた数字への注意です。第 2 回・第 7 回・第 8 回で 3 度繰り返された「うまくいかなかった場合」の備えは、公表された戦略本文に該当する節がありません。
これらの発言が、戦略の文言にどう反映されたか、あるいは反映されなかったかを示す対応表は、配付資料にも要旨にもありません。第 8 回要旨の冒頭は「これまでの意見を一つ一つ正確に丁寧に拾いまとめたものとして評価」と記していますA · EV-046。
5. 要旨に書かれていないもの
要旨の形式から、次のことが分かりません。
- 誰が述べたか。委員か、協議メンバー(企業・自治体)か、オブザーバーかの区別も無い
- 事務局がどう応答したか。質問に対する回答、資料の修正方針は記載されない
- 数値がどう決まったか。第 6 回で骨子案、第 7 回で伏せ字、第 8 回で 20GW という経過の中で、水準の比較が行われたかどうかは要旨に無い
- 非公開資料に何が書かれていたか。需要推計の受託者は第 3 回で国内ポテンシャル、第 5 回で海外ポテンシャルを発表しているが、いずれの資料も公開されていないA · EV-029。報告書(2025 年 1 月付)が委託調査ライブラリに載ったのは 2025 年 8 月で、協議会ページからのリンクは無い
逐語の議事録が作成されているか、作成されているなら保存されているかは、公開情報からは分かりません。この点は行政文書の開示請求(第 10 章で扱う予定)で確かめています。
6. 協議会の外で起きたこと
協議会の議論と並行して、次の決定が行われました。
- 2024 年 12 月 25 日: GX サプライチェーン構築支援事業で積水化学工業の採択が公表(補助金 1,572.5 億円が上限)。戦略公表の 27 日後A · EV-016
- 2025 年 2 月 6 日: 発電コスト検証ワーキンググループが PSC の 2040 年参考値 15.3〜16.4 円/kWh を公表A · EV-011
- 2025 年 2 月 18 日: 第 7 次エネルギー基本計画に「2040 年約 20GW」が明記。第 9 回要旨は「第 7 次エネルギー基本計画のなかでもペロブスカイト太陽電池の導入目標等が明記され」と記すA · EV-054
- 2025 年 9 月 4 日: 環境省の導入支援事業(補助率 2/3〜3/4)の公募開始A · PS-051
協議会は、目標を決めた後に、その目標を前提とする決定が積み上がる起点になりました。第 9 回以降の協議会で、目標の水準や前提(寿命、コスト、設置係数)を見直す議題は設定されていませんA · EV-054, EV-055。
7. ここまでで分かったこと、分からないこと
分かったこと
- 協議会は仕組みとして、参加者の資料を非公開とし、要旨は匿名とする。10 回で 40 件の発表資料が非公開
- 要旨には目標を求める発言と、前提に慎重な発言の両方が残る。後者が戦略にどう扱われたかの記録は無い
- 20GW が入った第 8 回は 1 時間で、取りまとめは座長一任となった
- 取りまとめ後の協議会は進捗報告の場で、目標の見直しは議題になっていない
分からないこと(確認中)
- 逐語の議事録の有無
- 非公開の 40 件、特に受託者が第 3 回・第 5 回で示した推計値
- 第 7 回から第 8 回の間に事務局と委員の間で行われたやり取り
これらは開示請求 02(協議会の運営・委員選任・議事記録)の対象です。
出典
| 記号 | 資料 |
|---|---|
| EV-028, 039, 043, 046, 054, 055, 057 | 官民協議会 議事要旨 第 1〜10 回(2024-05-29〜2026-05-20) |
| EV-037, 038, 040 | 第 1 回 資料 1「開催について」(運営要領)、資料 2、第 4 回 資料 1 |
| EV-056 | 各回 議事次第・議事要旨のプログラム欄(開催時間・発表者) |
| EV-029 | 官民協議会 開催一覧ページ(2026-05-19 更新) |
| EV-011, 016 | 発電コスト検証 WG 取りまとめ(2025-02-06)、積水化学工業 プレスリリース(2024-12-26) |
各資料の URL と取得日は証拠台帳と一次資料一覧に掲載しています。第 1〜8 回の配付資料・議事要旨の会合別比較は付属資料にあります。
自宅や事業所の屋根に太陽光を載せるか迷っている方へ。ペロブスカイトを待つべきか、いま結晶シリコンで進めるべきか、屋根の条件と電気の使い方を伺って一緒に整理します。
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推奨する引用形式
益田周防海(2026)「第 2 章 協議会の中で何が議論されたか」株式会社I-S3、2026-10-29 公開、https://www.i-s3.com/perovskite-policy-investigation-ch2-council-deliberations.html