要点
- 戦略(2024 年 11 月)は海外 7 社を「建設中」「建設予定」と整理したA · EV-075。2 年後の 2026 年 10 月時点で、GW 級ラインの連続稼働を自社発表しているのは中国の GCL(昆山、2026 年 9 月に全工程稼働)と UtmoLight(無錫、2025 年 2 月稼働)の 2 社である。GCL の 2026 年出荷見通しは 50〜100MWB · CL-035
- 欧州では、Oxford PV(英・独)が 2024 年 9 月に初の商業出荷を行い、ブランデンブルク工場のタンデムラインは定格数十 MW で 2 交代稼働している。量産は 2027 年、新工場は 2027 年末〜2028 年初の目標。ポーランドの Saule Technologies は 2025 年 6 月の増資が成立せず、2026 年 6 月に上場廃止、事業を停止した。主要株主は「生産ラインで 1 枚も製造されなかった」と述べているA · EV-064, EV-065
- 韓国 Hanwha Qcells は 2025 年 5 月時点で 2027 年上半期としていたタンデム量産の目標を、2026 年 10 月に 2028 年末へ、GW 級工場を 2029 年へと移したB · EV-066
- IEA PVPS は 2024 年末時点で「大規模商業生産は始まっていない」と記したA · EV-069。戦略の自立化水準 10 円は累積 80GW 強の生産を前提としており(第 1 章)、2026 年時点の海外の年間出荷は合計しても数百 MW の桁であるC · CL-036
- IEEFA は 2025 年 11 月、耐久 5〜12 年、各社見通しが政府目標を上回るコストを挙げ、シリコンが設置できない用途とタンデム型に絞るべきだと提言したA · EV-027
1. 戦略が示した海外の姿(2024 年 11 月)
戦略 p.14「海外企業における開発動向について」は、委託調査(BCG)と公表情報をもとに、海外企業を次のように整理していますA · EV-075。
| 企業(国) | 2024 年時点の整理 | 耐久性の記載 |
|---|---|---|
| 大正微納(中国) | 100MW 建設中 | 不明 |
| Saule Technologies(ポーランド) | 約 100MW 建設予定(2026 年) | 不明 |
| 極電光能 UtmoLight(中国) | 1GW 建設中、2026 年末までに 10GW へ拡張予定 | 10〜15 年(見込み) |
| 万度光能(中国) | 200MW・1.2GW 建設中 | 不明 |
| 協鑫光電 GCL(中国) | 100MW・1GW 建設中 | 不明 |
| 仁爍光能(中国) | 150MW、2024 年に 1GW 級建設予定 | 不明 |
| Oxford PV(英・独) | 100MW(稼働率 50% 以下) | 不明 |
この整理は、海外に GW 級の計画が並んでいることを示し、「国内市場は海外市場と比して小さい」ため当初から海外展開を視野に入れる、という戦略の論理につながっています。
2. 2026 年 10 月時点の各社
2-1. 中国
GCL(協鑫光電、昆山) 2025 年 6 月 24 日に第 1 期 1GW の生産基地の稼働式を行い(総投資 50 億元、目標 2GW)A · EV-067、2026 年 4 月に「1GW が稼働中、2026 年の出荷は約 100MW」、同年 6 月のインタビューでは「2026 年が量産初年度、第 3 四半期末までに出荷開始、初年度 50〜70MW」と説明しています。2026 年 9 月中旬に原材料投入から大面積モジュールまでの全工程が連続稼働し、「商業出荷が徐々に増えている」と発表しました。現在の優先事項は装置の稼働率、歩留まり、材料利用率、単位製造コストだとしていますB · EV-067。
創業者はコストについて、500MW 稼働時でシリコンの約 2 倍、1GW で約 1.5 倍、3GW でシリコンに近づくと述べていますB · EV-067。この見通しは、生産規模でコストが下がるという点で戦略の習熟曲線の考え方と同じ構造です。
UtmoLight(極電光能、無錫) 2025 年 2 月に GW 級ラインの稼働を自社発表し、フル稼働時に年 180 万枚のモジュール生産を見込むとしています。0.72m² モジュールの安定化効率 18.1%(NREL 測定)を公表していますB · EV-068。戦略が引用した「2026 年末までに 10GW へ拡張」の進捗を示す発表は確認できていません。
Microquanta(纖納光電、杭州・衢州) 100MW 級ラインを 2022 年から運転し、8.6MW の発電所が 1 年間稼働した実績を 2026 年 2 月に公表していますA · EV-068。衢州の GW 級ラインは 2025 年 2 月時点で「3 月に正式稼働予定」とされましたが、2026 年 6 月の業界媒体はなお「建設中」と記しています。累計導入量は 30MW 超(2026 年 8 月、企業発表)ですB · EV-068。
2-2. 欧州
Oxford PV(英・独) 2024 年 9 月、米国の事業者向けに 72 セル・効率 24.5% のタンデムモジュールを初めて商業出荷しましたA · EV-065。ブランデンブルク工場は、シリコンのボトムセル製造が定格約 100MW、タンデムの統合ラインは「連続 4 交代で定格数十 MW」で、実際は 2 交代で商業生産と開発を分け合っています。現行製品は効率約 25%、2026 年に効率 26%・15 年保証、2027 年に 27%・20 年保証、2030 年に 30%・30 年保証を目標とし、量産は 2027 年、新工場の製造開始は 2027 年末〜2028 年初の目標です。中国では Trina Solar、米国では First Solar にライセンス供与し、自社では製造しない方針ですB · EV-065。従業員は 100 人超で、2026 年 4 月時点で採用を続けています。
Saule Technologies(ポーランド) 戦略が「約 100MW 建設予定(2026 年)」と整理した同社は、2025 年 6 月、1 億ズロチの増資計画に十分な引受が集まらず、株主総会を取りやめて再建手続きの準備に入りました。主要株主の Columbus Energy は 2025 年 6 月 30 日時点で出資(4,400 万ズロチ超)と貸付(1,200 万ズロチ)を全額減損し、2026 年 1 月の声明で「ペロブスカイト技術の今後の見通しの分析」を減損理由の一つに挙げています。同社 CEO は「11 年間で約 3 億ズロチが投じられたが、生産ラインでペロブスカイトモジュールは 1 枚も製造されなかった」と述べました。2026 年 5 月時点で事業活動はなく、同年 6 月 26 日にワルシャワ証券取引所 NewConnect 市場から上場廃止となりました(2024・2025 年の財務報告未提出が理由)A · EV-064。創業者側は投資家側の対応を批判しており、経緯には争いがあります。
2-3. 韓国
Hanwha Qcells 鎮川工場に 40MW のパイロットライン(2024 年稼働)を持ち、大面積セルで認証効率 28% を公表しています。量産の目標時期は、2025 年 5 月に「2027 年上半期」、2026 年 10 月 15 日の説明会で「2028 年末までにセル・モジュールの量産開始」、GW 級工場は 2029 年と、1 年半ほど後ろに移りました。工場の立地は未定で、「産業政策が立地を左右し得る」と示唆していますB · EV-066。
2-4. 国際機関の整理
IEA PVPS の年次報告(2025 年 10 月)は、中国を中心に複数社がパイロットラインを立ち上げ実証向け出荷が始まったとしつつ、「2024 年末時点で大規模商業生産は始まっていない」と記していますA · EV-069。
3. 戦略の前提との対応
| 戦略の前提 | 2026 年 10 月時点の海外の実績 |
|---|---|
| 海外需要 500GW〜(2040 年)A · EV-045 | 企業が公表する 2026 年の出荷見通しは GCL 50〜100MW、Microquanta 累計 30MW 超、Oxford PV 非公表(定格数十 MW のラインを 2 交代)。合計しても数百 MW の桁 |
| 累積 80GW 強で設備費 6 万円/kW(10 円/kWh)A · EV-005 | 稼働を発表している GW 級ラインは中国 2 本。出荷ベースの累積は GW に達していない |
| 海外 7 社が建設中・計画A · EV-075 | 2 社が GW 級稼働を発表、1 社(Saule)は事業停止、1 社(Hanwha)は目標を後ろ倒し、1 社(Microquanta GW 級)は建設中、2 社(大正微納・万度光能・仁爍光能)は進捗の一次情報を確認できず |
| 耐久性「不明」「10〜15 年(見込み)」A · EV-075 | Oxford PV が 2026 年に 15 年保証、2027 年に 20 年保証を目標として公表。中国各社は IEC 61215/61730 認証を公表、保証年数の公表は確認できず |
海外の生産は立ち上がりつつありますが、2026 年時点の出荷量は、戦略が自立化水準の根拠に置いた累積生産量(80GW 強)からは 2〜3 桁小さい水準ですC · CL-036。これは、今後急拡大しないという意味ではありません。GCL の 3GW でシリコンに近づくという見通しや、Oxford PV のライセンス戦略が実現すれば状況は変わります。確認できるのは、2024 年の戦略が前提とした海外の規模が、2026 年時点ではまだ実績になっていないということです。
4. IEEFA の提言
米国の調査機関 IEEFA(Institute for Energy Economics and Financial Analysis)は 2025 年 11 月 25 日、"Japan needs a more nuanced perovskite strategy" を公表しましたA · EV-027。要点は次のとおりです。
- 政府目標(2030 年に生産能力 1GW 超、2040 年に 20GW、LCOE 10〜14 円)に対し、主要メーカー自身の見通しはこれを大きく上回る(積水化学 2030 年 20 円程度)
- 耐久性は 5〜12 年で、シリコンの 25 年に及ばない。実証中の多くの企業は安定性データや寿命を公表していない
- 2022〜2024 年度に「次世代再エネ」へ 548 億円、今後 10 年で約 1 兆円の支出計画
- シリコン太陽光など確立した技術を優先し、ペロブスカイトはシリコンが設置できない用途とタンデム型に絞る「より細かく分けた戦略」を採るべき
IEEFA の整理は、第 4 章で確認した政府自身の発電コスト検証(PSC 15.3 円 vs 事業用 7.9 円)と、第 5 章の環境省補助の単価に照らして矛盾しません。一方で IEEFA の「548 億円」は GX サプライチェーン構築支援事業の令和 6 年度予算枠に一致し、水電解や洋上風力を含む枠の値です。ペロブスカイト向けの採択額はこれより大きく(積水化学 1 社で上限 1,572.5 億円)、制度別の金額は公的支援の台帳に整理しています。
本調査は 2026 年 10 月 29 日、IEEFA の執筆者に本特集の一次資料(第 1〜8 回の 20GW 追跡と発電コスト検証の該当頁)を送付しました。回答が届き次第、本章に反映します。
5. ここまでで分かったこと、分からないこと
分かったこと
- GW 級ラインの連続稼働を発表しているのは中国 2 社。2026 年の出荷見通しは最大 100MW
- Oxford PV は商業出荷を続けているが規模は数十 MW、量産は 2027 年以降
- Saule Technologies は事業停止・上場廃止。Hanwha は量産目標を 2028 年末へ
- IEA PVPS は 2024 年末時点で大規模商業生産なしと整理
- 2026 年時点の海外出荷は、戦略が前提とした累積 80GW から 2〜3 桁小さい
分からないこと(確認中)
- 大正微納・万度光能・仁爍光能の 2025〜2026 年の状況(一次情報未取得)
- Oxford PV の 2026 年の出荷量、Microquanta の GW 級ラインの稼働時期
- 中国各社の保証年数と屋外の発電実績(kWh)
- 戦略 p.14 の整理に用いた BCG の海外動向調査の原本(開示請求 01 の対象)
出典
| 記号 | 資料 |
|---|---|
| EV-075, 045, 005 | 次世代型太陽電池戦略 p.14, p.20, p.32, p.34(2024-11-28) |
| EV-064 | Puls Biznesu(2025-06-09)、Columbus Energy 声明(2026-01-13)、WNP.pl(2026-05-21)、money.pl(2026-06-26) |
| EV-065 | Oxford PV プレスリリース(2024-09-05)、pv magazine(2026-01-16)、pv Europe 工場取材(2026) |
| EV-066 | Perovskite-Info/Asia Business Daily(2026-10-16〜21)、Hanwha Qcells 発表 |
| EV-067 | 昆山市人民政府・GCL Technology(2025-06-25)、pv magazine(2026-04-07)、TaiyangNews(2026-06、2026-09-23)、GCL Perovskite 発表(2026-09〜10) |
| EV-068 | UtmoLight 発表(2025)、Microquanta 公式サイト(2026-02-28)、pv magazine(2026-06-24) |
| EV-069 | IEA PVPS「Trends in Photovoltaic Applications 2025」p.63(2025-10) |
| EV-027 | IEEFA "Japan needs a more nuanced perovskite strategy"(2025-11-25) |
企業の発表値は自社公表であり、第三者の確認がない項目は B としています。各資料の URL と取得日は証拠台帳と一次資料一覧に掲載しています。
自宅や事業所の屋根に太陽光を載せるか迷っている方へ。ペロブスカイトを待つべきか、いま結晶シリコンで進めるべきか、屋根の条件と電気の使い方を伺って一緒に整理します。
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益田周防海(2026)「第 7 章 海外では何が起きているか」株式会社I-S3、2026-10-29 公開、https://www.i-s3.com/perovskite-policy-investigation-ch7-overseas.html