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序章 もしペロブスカイトが日本で発明されていなかったら

一つの思考実験から始めたい。

もし2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授がペロブスカイト太陽電池を発明していなかったら――つまり、この技術が最初から「アメリカ発」や「韓国発」だったとしたら――日本政府は今と同じ太陽光政策を選んでいただろうか。

2040年に20GW。GXサプライチェーン構築支援事業で1社の生産ライン構築に1,572.5億円の補助。東京都は民間の設置費を100%補助する制度まで用意した。FIT/FIPには専用区分の創設が検討され、第7次エネルギー基本計画には技術方式名が明記された。特定の発電「方式」がここまで政策文書の主語になった例は、日本のエネルギー政策史でもまれである。

この優遇の根拠として繰り返されるのは、次の四つの命題だ。

  1. 日本発の技術である
  2. 主原料のヨウ素は日本が世界2位の生産国である(シェア約26〜30%)
  3. 軽量なので、シリコン太陽電池を設置できない場所に設置できる
  4. したがって中国依存から脱却でき、国策として優先的に普及させるべきだ

本稿はこの四段論法を、経済産業省・資源エネルギー庁の官民協議会資料、USGS(米国地質調査所)の鉱物資源統計、JIS C 8955(太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法)、メーカーの一次発表、査読論文、中国メーカーの認証データまで遡って検証した。先に結論を要約すれば、こうなる。

検証結果の要約
  • シリコンの対中依存は「資源」の問題ではなく「製造能力」の問題であり、ペロブスカイトに乗り換えても製造競争の構図は変わらない。むしろ同じ競争がもう一度始まっている。
  • ヨウ素は、政府目標20GW分を全部作っても日本の年間生産量の約3%しか使わない。モジュール価格に占めるヨウ素コストは1%前後。「不足しない」ことと「競争優位にならない」ことは表裏一体である。
  • 構造工学的には、屋根上のパネルを支配する荷重は自重ではなく風圧(負圧で1〜3kN/m²=約100〜300kgf/m²)と積雪である。自重1kg/m²(0.01kN/m²)はその1%未満に過ぎない。軽さが効くのは「固定荷重の余裕が数kg/m²しかない」限られたケースだけであり、その全国面積を裏付ける構造工学的データは公開資料からは確認できなかった
  • その限られたケースの多くは、2.8〜4.3kg/m²・変換効率19〜22.5%・寿命25年級の軽量シリコン(実在製品)で既に対応可能である。
  • 政府の発電コスト検証ワーキンググループ自身が、2040年時点でペロブスカイト15.3〜16.4円/kWh、事業用シリコン6.6〜8.8円/kWhと試算している。政府の計算でも2040年に2倍の差が残る
  • 中国では100社以上がペロブスカイトを開発中で、GCL傘下企業はタンデム型モジュール(効率26.5〜28%)をGW級ラインで量産し、コストは約0.6元/W(約13円/W)と自社発表。2026年7月から日本市場でも販売を開始した。「日本だけが作れる技術」という前提は、すでに崩れている。

誤解のないように先に述べておく。本稿はペロブスカイト太陽電池という技術を否定するものではない。宮坂教授の発明は世界の太陽電池研究の景色を変えた偉大な仕事であり、積水化学やカネカ、エネコートテクノロジーズ、アイシンなどの開発努力にも敬意しかない。研究開発への公的投資は続けるべきだし、後述するとおり、ペロブスカイトが本当に優れている用途も存在する。

本稿が検証の対象とするのは技術ではなく、「特定の技術方式を最初に答えとして決め、その普及量を国家目標にする」という政策判断の論理構造である。数字を追っていくと、この論理の前提が一つずつ疑わしくなっていく。その過程を、順番にお見せしたい。

第1章 群馬のネギとこんにゃくの話

本題に入る前に、一つ比喩を置いておきたい。弊社が拠点を置く群馬県の話である。

群馬県は下仁田ネギとこんにゃく芋の名産地だ。こんにゃく芋に至っては国内生産量の9割超を占める。気候、土壌、蓄積された栽培技術。こんにゃく芋について群馬県が比較優位を持つことは、疑いようのない事実である。

では、次の提案はどうだろうか。

「群馬にはこんにゃく芋がある。特色ある県産資源であり、他地域より競争力がある。したがって群馬県は、限られた産業政策の資源をこんにゃく産業へ集中させ、県経済の中心産業として育成すべきだ」

ほとんどの人は賛成しないはずだ。理由を言葉にすると、こうなる。「比較優位のある産品を持っていること」と「それを地域経済全体の中心に据えること」の間には、市場規模・付加価値・雇用・成長性という何段階もの検証が挟まらなければならない。こんにゃくの世界市場は小さく、単価は限られ、どれだけシェアが高くても県経済の柱にはならない。だから群馬県は実際には、自動車産業や輸送機器を経済の中心に置き、こんにゃくは「強い特産品」として適切な規模で支援している。それが正しい産業政策である。

「日本にはヨウ素がある。だから日本の太陽光産業はペロブスカイト中心にすべきだ」という論理は、構造的にこれと同じ飛躍を含んでいる。ヨウ素という資源の存在は事実だ。しかしその事実から「太陽光政策の中心にペロブスカイトを据える」という結論までの間には、(1) ヨウ素がペロブスカイトのコストと競争力にどれだけ寄与するか、(2) ペロブスカイトが解決する社会課題の規模はどれだけか、(3) 他の技術がその課題をもっと安く解決できないか、という検証が挟まらなければならない。

以下、その検証を一つずつ行う。

第2章 シリコンは本当に「資源安全保障上不利」なのか

2-1 混同されている二つの命題

「シリコンは中国に握られている。ヨウ素は日本にある。だからペロブスカイトは経済安全保障に資する」――この説明は、二つの異なる命題を混同している。

  • 命題A:中国がシリコン太陽電池の製造を支配している → 事実
  • 命題B:中国がシリコンという資源を支配している → 事実ではない

ケイ素(Si)は地殻中で酸素に次いで2番目に多い元素であり、地殻の約28%を占める。原料となる珪石・珪砂は世界中に賦存し、日本国内にも存在する。「シリコンが採れないから日本は負けた」のではない。IEAの分析によれば、中国はポリシリコン精製・インゴット・ウェハ・セル・モジュールという製造工程の全段階で世界シェア8割超を握り、ウェハとポリシリコンでは95%に迫る。つまりこれは資源問題ではなく、設備投資・電力コスト・産業集積の問題である。

この区別は決定的に重要だ。なぜなら、資源問題なら「別の資源を使う技術」への転換が解決になるが、製造産業構造の問題なら、技術を替えても同じ競争をもう一度やらされるだけだからである。ペロブスカイトの製造も、基板フィルム、バリアフィルム、透明電極、封止材、レーザー加工装置、ロールtoロール成膜装置という設備・部材の量産競争であり、そこで問われるのは資源の有無ではなく、投資規模とスピードだ。この点は第7章で改めて検証する。

2-2 ヨウ素を定量する:20GW分で年産の3%

次に、ヨウ素という「日本の強み」を数字にしてみる。

USGSのMineral Commodity Summaries 2025によれば、2024年の世界のヨウ素生産はチリ約22,000トン、日本約9,300トンで、この2カ国で世界供給の約9割を占める(日本のシェアは約26〜30%、世界2位)。埋蔵量では日本が約490万トンで世界最大とされる。ここまでは推進論の言うとおりである。

では、ペロブスカイト太陽電池はヨウ素をどれだけ使うのか。この分野の第一人者である東京大学の瀬川浩司教授自身が、分かりやすい数字を挙げている。1MWのペロブスカイト太陽電池に必要なヨウ素は約16kg。発電層が数百ナノメートルと極薄だからだ(同教授はこれを、シリコン太陽電池1MWに原料シリコンが最低2トン必要なことと対比し、ペロブスカイトの原料コストの安さの根拠として挙げている)。

この数字を政府目標に当てはめると、次のようになる。

  • 2040年目標20GWに必要なヨウ素 = 16kg/MW × 20,000MW = 累計約320トン
  • 日本のヨウ素年間生産量 = 約9,300トン
  • つまり、15年かけて導入する国家目標の全量が、日本のヨウ素のわずか1年分の生産量の約3.4%で賄える。
  • ヨウ素の国際価格は1kgあたり約61ドル(2023年)。16kg/MWなら約976ドル/MW = 0.1〜0.15円/W。モジュール実勢価格(シリコンで14〜15円/W)と比べれば、ヨウ素はモジュール価格の約1%である。

ここに、推進論があまり語らない表裏一体の関係がある。「発電層が極薄でヨウ素使用量が少ないから、ヨウ素不足の心配がない」という主張は正しい。しかしそれは同時に、「ヨウ素を持っていることが競争優位にほとんどならない」ことを意味する。製品コストの1%しか占めない原料の産地であることは、製品の価格競争力を1%分しか説明しない。残りの99%――フィルム、電極、封止材、製造装置、歩留まり、人件費、電力費、資本コスト――の勝負は、ヨウ素とは無関係に決まる。

さらに言えば、ヨウ素の商売とペロブスカイトの国産化は論理的に独立している。実際、国内ヨウ素最大手の伊勢化学工業は2026年2月、ペロブスカイト向けヨウ化鉛の生産体制構築を発表したが、ヨウ化鉛はどの国のセルメーカーにも売れる。仮に世界のペロブスカイト量産競争を中国メーカーが制したとしても、日本のヨウ素産業はその中国メーカーに原料を売って利益を上げられる。つまり「ヨウ素の強み」を活かすために、日本製ペロブスカイトが世界に普及する必要はそもそもないのである。これは千葉のヨウ素産業にとっては朗報だが、「ヨウ素があるから国産ペロブスカイトを国策で普及させるべきだ」という論理にとっては致命的である。両者をつなぐ線が、存在しないからだ。

なお、増産余地にも注意が要る。国産ヨウ素は南関東ガス田等の天然ガスかん水から採取されるが、急激な汲み上げ増は地盤沈下リスクを伴い、業界自身が「増産は容易ではない」と述べている。世界のペロブスカイトが政府の想定する「海外500GW以上」の規模に達した場合に必要なヨウ素は累計約8,000トン、TW(テラワット)級なら1.6万トンを超え、年間の生産ペースにも数百〜千トン規模が上乗せされる計算になる。世界供給が窮屈になり得るのはこの規模からだが、そのとき最も恩恵を受けるのは、増産余地の大きい世界最大の生産国チリである。

第3章 「重量10分の1」を構造工学で検証する

3-1 屋根を支配しているのは自重ではない

「シリコンは15〜25kg/m²、ペロブスカイトは1〜数kg/m²。だから耐荷重の小さい屋根に置ける」。この説明は、屋根に載る太陽光発電設備の構造設計を単純化しすぎている。

太陽電池アレイの支持物設計は、JIS C 8955:2017が規定するとおり、(a)固定荷重(自重)、(b)風圧荷重、(c)積雪荷重、(d)地震荷重の組み合わせで行う。このうち日本の大半の地域で設計を支配するのは風圧荷重、多雪地域では積雪荷重であって、モジュールの自重ではない。

オーダーを示そう。JISの設計用速度圧 qp は基準風速V0(地域ごとに30〜46m/s)と環境係数から求める。関東内陸の一般的な条件(V0=34m/s、粗度区分III、建物高さ10m級)で qp は概ね1,000N/m²前後になる。勾配屋根に平行設置したパネルに働く負圧(吸い上げ)の風力係数Caは1.35前後(勾配10度)で、寄棟屋根の端部では最大約2.0の係数が規定されている。掛け合わせると、風によるパネルの吸い上げ力は約1.4kN/m²(約140kgf/m²)、条件次第で2〜3kN/m²(200〜300kgf/m²)に達する。台風常襲地域ではさらに大きい。

積雪はどうか。JISの雪の平均単位荷重は一般地域で積雪1cmあたり20N/m²。垂直積雪量50cmの地域で1kN/m²(約100kgf/m²)、多雪区域の1.5mなら3kN/m²(約300kgf/m²)である。

この土俵に自重を並べてみる。

荷重の種類大きさの目安
風圧荷重(負圧・吸い上げ)約1.4〜3kN/m²(140〜300kgf/m²)
積雪荷重(垂直積雪50cm〜1.5m)約1〜3kN/m²(100〜300kgf/m²)
従来型シリコンPVの自重(架台込み)約0.15〜0.25kN/m²(15〜25kgf/m²)
フィルム型ペロブスカイトの自重約0.01〜0.03kN/m²(1〜3kgf/m²)

ペロブスカイトの自重1kg/m²は、風の吸い上げ力の1%未満である。つまり、風に対する固定設計において「軽さ」は何の助けにもならない。それどころか、下向きに働く自重は吸い上げに対してわずかに抵抗する側なので、極端に軽いことは風に対してはむしろ不利ですらある。フィルムを金属屋根に接着する工法では、吸い上げ力は接着層を介して屋根材そのもの(折板の板厚、母屋の間隔、母屋と梁の接合部)に伝わる。「構造の弱い屋根だからペロブスカイト」という説明は、風に関する限り成立しにくい。構造の弱い屋根は、風にも弱いからである。

一方、従来型シリコンについても公平に見る必要がある。架台とレールを使う設置は、荷重を複数の折板・母屋に分散させる設計が可能であり、金具や工法によっては屋根の局部剛性をむしろ高める。つまり「屋根の耐荷重 ≧ PV重量なら設置可、そうでなければ不可」という単純な引き算モデルは、シリコン側にとっても実態より厳しく、ペロブスカイト側にとっては実態より甘い。設置可否は自重の比較ではなく、風・雪・地震・固定部を含む構造計算の総合判定で決まる。

3-2 軽さが本当に効く領域は存在する――ただし狭い

では自重差は無意味かといえば、そうではない。効く領域は明確に存在する。固定荷重の追加余裕そのものが数kg/m²しかない構造物である。

実例もある。自然エネルギー財団の2025年10月のレポートによれば、JR博多駅のホーム屋根の実証では、屋根の耐荷重の想定は3kg/m²。ここではシリコンは軽量品でも架台込み5kg/m²前後になるため入らず、シート込み2〜3kg/m²のフィルム型ペロブスカイトだけが構造計算を通過する。駅ホーム、老朽化した体育館の一部、膜構造、テント倉庫、通信基地局のポール巻き付け、風車タワー側面。こうした「本当に数kg/m²しか余裕がない」用途は実在し、そこではペロブスカイトの軽さと柔軟性は本物の価値である。この点は明確に評価したい。

問題は、その面積が日本全体でどれだけあるかだ。政府は2040年20GW(フィルム型・効率15%なら約1.3億m²に相当する)という目標を掲げている以上、「シリコンでは構造的に不可能だが、ペロブスカイトなら風・雪・固定部を含む構造計算を通過する屋根」が、それに見合う規模で存在することを示す必要がある。

公開資料からは確認できなかったこと
官民協議会の導入ポテンシャル推計(発電コスト15円/kWhで約25GW)の算定根拠を遡ると、屋根・壁面150W/m²(変換効率15%)、窓75W/m²という発電条件と設置可能面積、経済性から積み上げたモデルであり、個々の屋根の耐荷重・風荷重・固定部を評価した構造工学的な面積推計は含まれていない。「工場・倉庫の屋根の約4割は耐荷重不足でシリコンを設置できない」という広く流通する数字も、遡ると海外の軽量モジュールメーカー等の販促資料に行き着き、日本の建築ストックを対象にした公的な構造調査は本稿の調査範囲では見つけられなかった。20GWという目標の物理的な裏付けとなる「Si不可・PSC可」の屋根面積は、現時点で誰も公表していない。これは本稿の主張ではなく、調査の結果として確認できた事実である。

第4章 比較対象から「軽量シリコン」を消してはいけない

ペロブスカイト推進の説明資料は、ほぼ例外なく「従来のガラス封止シリコン(15〜25kg/m²)」と「フィルム型ペロブスカイト(1kg/m²)」を比較する。しかしこの二択は、市場に実在する第三の選択肢を消している。軽量シリコンである。

ガラスを樹脂複合材やポリマーフロントシートに置き換え、フレームを外し、薄型セルを使ったシリコンモジュールは、すでに複数社から量産・販売されている。実在製品のカタログ値を並べる。

製品タイプ(実在例)面重量変換効率寿命・保証の目安
従来型ガラスシリコン11〜15kg/m²(架台込み15〜25kg/m²)20〜23%出力保証25〜30年
軽量ガラスシリコン(薄ガラス)約8.3kg/m²約23%ガラス品に準ずる
樹脂フロント軽量シリコン(AIKO ABC系)約4.3kg/m²約22.5%長期保証あり
ガラスレス複合材シリコン(Sunman eArc系)2.8〜4.1kg/m²約19.3%風圧2,400Pa認証取得
薄型CIGSシート工法(PXP+日揮、参考)シート込み約2kg/m²開発中実証中
フィルム型ペロブスカイト(積水SOLAFIL)約1kg/m²(シート込み2〜3kg/m²)15%耐久性10年相当(公表値)

この表が突きつける問いはシンプルだ。「4kg/m²を1kg/m²にするために、変換効率の3分の1と寿命の半分以上を差し出す合理性が、どれだけの屋根にあるのか」

軽量シリコンは4kg/m²前後で効率19〜22.5%、寿命はガラス品に準じて20〜30年級。フィルム型ペロブスカイトは1kg/m²(設置システムとしては2〜3kg/m²)で効率15%、耐久性は公表値で10年相当である。前章で見たとおり、風と雪の前では3kg/m²の差は誤差であり、この差が意味を持つのは「固定荷重の余裕が2〜4kg/m²の間にある屋根」という、さらに狭い帯域だけだ。博多駅のホーム屋根(3kg/m²)はまさにその帯域の実例だが、国家目標の単位がGWである以上、この帯域の全国面積が示されなければ、「軽いから巨大市場がある」という主張は検証不能のままである。

政策論として重要なのは、仮に「低耐荷重屋根の開拓」が本当に国家的課題なのだとしても、その課題に対する技術中立な答えは「軽量シリコンとフィルム型ペロブスカイトと薄型CIGSを同じ土俵で競わせ、構造計算を通過して30年LCOEが最も低いものを選ぶ」であって、「ペロブスカイトと決めてから補助金を付ける」ではない、ということだ。現に環境省・東京都の導入支援事業はペロブスカイトという方式を指定して公募している。課題(低耐荷重屋根での発電)ではなく方式(ペロブスカイト)を指定した瞬間に、政策は「課題を解く」ことから「技術に用途を探してやる」ことへ目的が入れ替わる。

第5章 最大の競争相手は現在のシリコンではなく「未来のシリコン」

ペロブスカイトの事業計画を評価するとき、私たちは無意識に「現在のペロブスカイト対現在のシリコン」を比較してしまう。しかしペロブスカイトの量産が本格化する2027〜2030年に市場で戦う相手は、2030年のシリコンである。そしてシリコンは、止まっていない。

  • 効率:N型TOPConモジュールの量産効率は22〜24.5%に達し、バックコンタクト(IBC/ABC)は24〜26%。研究レベルでは単接合シリコンセルで27.81%(LONGi、2025年)。
  • 価格:中国製TOPConモジュールの国際スポット価格は約9セント/W=約14〜15円/W(2026年時点、資源総合システム調べ)。10年前の数分の1である。
  • タンデム:シリコンの上にペロブスカイトを積むSi/PSCタンデムは、セル効率でLONGiが35.5%(2026年7月、ESTI認証)、モジュールでも31.4%の認証値に達した。タンデムの理論限界は約43%で、単接合の33.7%を大きく超える。

ここで注意すべきは、タンデムという「本命」の位置づけである。Si/PSCタンデムはペロブスカイト技術の勝利であると同時に、シリコン産業の延長線上にある技術だ。ボトムセルは高品質なシリコンセルであり、タンデムの量産能力はシリコンセルの量産能力の上にしか築けない。世界最高のタンデム効率を出しているのが、世界最大のシリコンメーカーLONGiであることは偶然ではない。経産省の官民協議会自身、タンデムが商用化されれば2032年以降、既設シリコンのリプレース需要だけで2040年までに累計66.8GW――フィルム型の想定市場20GWの3倍以上――と試算している。つまり政府の資料の中でさえ、大きい市場はフィルム型ではなくタンデム型であり、タンデムで戦うにはシリコンの製造基盤が要る。シリコンを「負けた技術」として捨てる戦略は、本命の土俵を自ら手放す戦略でもある。

「動いている標的」の怖さは、日本自身が一番よく知っているはずだ。かつて液晶で、半導体で、そしてシリコン太陽電池そのもので、日本は「現時点の自社技術と現時点の競合」を比較して投資判断を行い、量産が立ち上がる頃には競合が別次元の価格と性能に到達していた。2030年に効率20%・耐久20年を目指す(積水化学の公表目標)フィルム型ペロブスカイトが対峙するのは、効率25%前後・寿命30年・15円/W以下のシリコンと、効率30%超のタンデムである。

第6章 寿命を入れてLCOEで比べる――政府自身の数字が答えを出している

「量産すれば製造コストはシリコンより安くなる可能性がある」。ペロブスカイト推進論の経済性の主張は、ほぼこの一点に依存している。しかし発電事業の経済性は製造コストではなく、寿命と稼働率まで含めた均等化発電原価(LCOE)で決まる。

現時点の公表値で構成要素を並べる。

  • フィルム型ペロブスカイトの稼働年数は現時点で10〜15年相当(積水SOLAFILの公表耐久性は10年)。シリコンは25〜30年。
  • 効率はフィルム型15%に対し、シリコン20〜24.5%。同じ屋根面積から得られる電力量が最初から3〜4割少ない。
  • 設置工事費のうち6〜7割は電気工事費(日揮の実証担当者による)。この部分はモジュールが何であってもかかり、モジュール寿命が尽きるたびに再発生する。

30年間の屋根で考えると、シリコンは1回の施工で走り切る。寿命10〜15年のペロブスカイトは、撤去・処分・再配線・再接着・発電停止期間を伴う再施工を1〜2回挟む。仮にモジュール本体が無償だったとしても、工事費・足場・配線・廃棄の費用が2〜3回かかった時点で、30年LCOEでシリコンに追いつくのは容易ではない。しかも接着工法は撤去時に接着剤の除去・屋根材の補修という、架台工法にはないコストを追加する。

この構造的な不利は、推進側の資料にも正直に現れている。決定的なのは、政府の発電コスト検証ワーキンググループ自身の試算である。

政府・発電コスト検証WGの2040年試算
  • ペロブスカイト太陽電池:15.3〜16.4円/kWh
  • 事業用シリコン太陽光:6.6〜8.8円/kWh
  • 2040年になってもなお2倍以上の開き。第7次エネ基の目標値(10〜14円/kWh)は、政府自身のコスト検証と整合していない。

さらに、官民協議会の資料は「発電コスト10円/kWhの実現には累積生産量80GWの習熟効果が必要」と明記している。80GWを2040年までに積むには2030年から年8GW規模の生産が必要だが、国内最大の計画である積水化学の2030年目標は年1GWである。8分の1だ。つまり、目標コストの前提となる生産規模と、実際に計画されている生産規模の間に、政府資料の中で既に8倍の乖離がある。需要はコストが下がらないと生まれず(16円/kWhで21GW、10円/kWhで37GWという政府の需要曲線)、コストは需要がないと下がらない。この循環を補助金で回し続けることが「産業の自立」と呼べるのかは、政策資料自身が説明できていない。

誤解を避けるために付け加えるが、これは「ペロブスカイトのコストは永遠に下がらない」という主張ではない。封止材の進歩で寿命が20年、25年と延びればLCOEの構図は変わり得るし、そうなることを願っている。指摘しているのは、寿命と効率が現状のままでの大量普及を、国費で先取りする合理性はないということだ。寿命20年・効率20%が実証されてから普及を加速しても、遅くはない。技術の完成前に普及目標を固定するから、順序が逆になるのである。

第7章 鉛を感情論ではなく物質フローで評価する

ペロブスカイト太陽電池の発電層は鉛化合物を含む。この事実は「鉛だから危険だ」という煽りにも、「微量だから問題ない」という楽観にも使われてきた。どちらも定量を欠いている。数字で置き直す。

  • 標準的な発電層(厚さ550nm級)の鉛量は約0.75g/m²(Nature Energy等に掲載された標準的な推計)。
  • 効率15%(150W/m²)とすると、1MWあたり約6,700m²で鉛約5kg/MW、1GWで約5トン、20GWで累計約100トン
  • 参考として、日本国内の鉛需要は年30万トン弱(2020年実績28.6万トン、約85%が鉛蓄電池向け。JOGMEC統計)。また従来の鉛はんだを使うシリコンモジュールにも1枚あたり10g前後、面積あたり数g/m²の鉛が使われてきた(近年は鉛フリー化が進行中)。つまり面積あたりの鉛量では、ペロブスカイトは従来型シリコンより少ない

量だけ見れば、20GWで100トンという総量は管理可能な規模であり、「鉛があるから普及させるな」という主張は成立しない。ペロブスカイトだけを恣意的に悪く描くべきではない。

ただし、リスクの性質の違いは直視する必要がある。ハロゲン化鉛ペロブスカイトは水溶性が高い。査読論文の実測では、封止のない素子は水没・降雨条件で数日以内に含有鉛のほぼ全量(9割超)が溶出する。一方、適切に封止されたモジュールは、雹で割った状態でも9カ月の屋外暴露での溶出は初期鉛量の0.07〜0.15%にとどまり、土壌影響は自然背景値レベルという報告もある。つまり鉛リスクの実像は「封止と回収の管理問題」であり、健全なモジュールの使用中リスクは小さいが、破損・火災・水害時と、廃棄段階の管理が全てということだ。

ここで思い出すべきは、日本の太陽光政策の実績である。FITで大量導入したシリコンパネルについて、廃棄費用の積立が義務化されたのは制度開始から10年後の2022年7月。リサイクルを法制化した「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律」の公布は2026年6月――FIT開始から実に14年後である。導入を先に走らせ、廃棄の設計を後回しにした結果だ。水溶性の鉛を含む新技術を、寿命10〜15年(=廃棄の波が最初のシリコンより早く来る)で、体育館の屋根や駅のホームという人が密集する場所に国策で展開するのであれば、破損時の回収手順、火災時の消防対応、廃棄時の分別・回収スキーム、リサイクル技術と費用負担を、導入前に制度として確定させるのが、同じ失敗を繰り返さない唯一の方法だ。現時点で、ペロブスカイト専用の廃棄・回収制度は存在しない。これも「反対の論拠」ではなく「導入の前提条件が未整備である」という事実の指摘である。

第8章 中国はペロブスカイトを作れないのか

「日本発の技術だから、今度こそ日本が勝てる」。この期待を検証するには、二つの問いを分ける必要がある。(1) 日本は技術的に先行しているか。(2) 技術的先行は産業の勝利につながるか。

8-1 20年前、日本は世界の半分だった

シリコン太陽電池において、日本は「技術で先行した国」だった。1974年のサンシャイン計画以来、世界の研究開発をリードし、2004年にはシャープ・京セラ・三洋電機など国内勢で世界生産シェアの約50%を握っていた。シャープは7年連続で世界首位。セル効率でも品質でも、日本製は世界最高水準にあった。

そこから何が起きたかは、数字が語る。日本のセル生産シェアは2007年に25%、2012年に6%、現在は1%未満。国内出荷のセル・モジュールの95%が海外製、金額ベースの輸入の約8割が中国製である。敗因は技術ではない。RIETIをはじめとする産業研究の結論はほぼ一致している――設備投資の規模とスピード、量産技術、サプライチェーン構築、価格で、株式市場から一気に資金調達して年GW単位の投資を打つ中国新興勢に、大企業の一事業部として社内予算の制約下にあった日本勢が追随できなかった。つまり日本は「研究開発・セル性能・製品品質で優れていながら、製造業としての勝負で敗れた」。これは第2章で見た「資源問題ではなく製造産業構造の問題」の、歴史側からの裏付けである。

8-2 そして今、同じ映画が再上映されている

ではペロブスカイトで、同じことが起こらない保証はあるか。2026年時点の事実を並べる。

日本(積水化学=国内最大の計画)中国(GCL光電=一例)
量産開始2026年3月販売開始(年産10MW、現有設備)2021年に100MWパイロット、2025年6月にGW級ライン投産
製品フィルム型単接合、効率15%、耐久10年相当タンデム型2.4m×1.15m、量産効率26.5〜28%、製品保証10年
コスト非公表(価格は個別協議)約0.6元/W(約13円/W)と自社発表。従来シリコン比3割安を主張
拡張計画2027年4月に100MWライン、2030年に1GW(総投資約3,100億円、GX補助対象経費3,145億円・補助上限1,572.5億円)2026年内に5GW、2027年に6GWへ拡張を計画
日本市場環境省・東京都の補助事業向けに供給中2026年7月から日本で販売開始(供給の5%を日本へ)

さらに広く見れば、中国では極電光能(UtmoLight)、繊納光電(Microquanta)などがGW級量産に近づき、100社以上がペロブスカイトを開発中で、CATLやBYDまで研究に参入している。タンデムのセル効率世界記録35.5%はLONGi(中国)、大面積モジュールの30%超えも中国の計測機関の認証値だ。2026年3月時点で中国国内には既にGW級ペロブスカイト連携電站プロジェクトが8件建設されている。

自社発表値を割り引いて読むべき点はある。GCLの「0.6元/W」や歩留まり98%は第三者検証を経た数字ではないし、タンデムの実フィールド耐久性はまだ証明されていない。しかし、それを言うなら日本側の「2030年に効率20%・耐久20年」も同じく将来の約束である。確実に言えるのは、「ペロブスカイトは日本にしか作れない」という前提は既に事実によって否定されており、量産の規模とスピードでは中国勢が先行しているということだ。「日本発だから日本が勝つ」に、シリコンのときと異なる根拠は、少なくとも公開情報からは見いだせなかった。むしろ特許を回避しながら量産で抜き去るという展開は、シリコンで一度見た脚本そのものである。

第9章 最悪のシナリオ――二正面で負ける

以上の検証を組み合わせると、単なる悲観論ではない、構造的に起こり得るシナリオが描ける。

  1. 日本は「シリコンでは中国に勝てない」との総括から、政策資源(GX補助金、公共調達、FIT/FIP新区分、自治体補助)をペロブスカイトに集中させる。
  2. 国内市場は補助金でフィルム型ペロブスカイトへ誘導され、ただでさえ細ったシリコン関連の国内産業基盤(セル・モジュール・部材・装置)との接点がさらに縮小する。
  3. フィルム型の寿命・効率・コストの改善には想定より時間がかかる(政府WG試算の2040年15.3〜16.4円/kWhは、まさにそれを織り込んだ数字である)。
  4. その間に中国は、シリコンをさらに高効率・低価格化し(TOPCon→BC→タンデム)、単接合ペロブスカイトの量産技術も獲得し、Si/PSCタンデムも量産する。タンデムに必要なシリコンセル基盤は、世界の95%を中国が握っている。
  5. 結果、日本は「シリコンからは撤退済み、フィルム型ペロブスカイトでは量産競争に敗北、本命のタンデムにはシリコン基盤がなく参入できない」という三重の空白に立つ。

これは絵空事ではない。各段階が、既に観測されている事実(シェア1%未満のシリコン基盤、政府自身のコスト試算、GCLの量産と対日輸出開始、LONGiのタンデム記録)の延長線上にある。そして最も皮肉なのは、このシナリオにおいて日本のヨウ素産業だけは、中国メーカーに原料を輸出して繁栄し得るということだ。「ヨウ素があるから」で始まった国策の終着点が「ヨウ素だけが残った」であれば、それは産業政策の成功とは呼べない。

もう一つ、見落とされがちな国内側の被害がある。補助金で方式を指定した市場誘導は、技術中立に最適な設備を選定して顧客に提案する国内の設計・施工・O&M産業の判断を歪める。屋根の構造計算をすれば軽量シリコンが最適な現場に、補助率の高さゆえにペロブスカイトが載る。その差額は納税者が払い、寿命が尽きるのも早い。政策が技術を選ぶとき、市場の隅々でこの小さな非効率が数十万回繰り返される。

第10章 では日本は何をすべきか――技術中立の再設計

批判だけで終わらせない。代替案を示す。

第一に、政策目標の書き換えである。「国産ペロブスカイトを2040年に20GW導入する」という方式×数量の目標を、「世界のPV産業のバリューチェーンから、日本企業が持続的に獲得する付加価値を最大化する」という成果の目標に置き換える。導入量は目標ではなく、技術中立の計算の結果として出てくる従属変数にする。

第二に、その成果目標の下で、候補を同じ物差し(円/kWh、円/W、W/m²、kg/m²、寿命、施工費、30年LCOE、資源制約、供給途絶リスク、国内付加価値率、世界市場規模、将来競争力)で並べて評価する。本稿の調査を踏まえた暫定的な見立てはこうだ。

  • 発電量の主力:向こう15年の日本の脱炭素とkWh単価を支えるのは、引き続きシリコン(将来はSi/PSCタンデム)である。これは輸入パネルを含めて最も安く確実な手段であり、ここをためらう理由はない。
  • 低耐荷重屋根:軽量シリコン・薄型CIGS・フィルム型ペロブスカイトを方式指定なしで競わせる。「構造計算を通過し30年LCOE最小のものに補助する」という課題ベースの制度に改める。
  • 日本企業が世界で付加価値を取れる領域:完成品モジュールの価格競争ではなく、封止材・バリアフィルム(ペロブスカイトの寿命問題はそのまま日本の化学メーカーの市場である)、透明電極、製造装置・レーザー加工、PCS・パワエレ、蓄電池、EMS、施工技術、O&M、リパワリング、リユース・リサイクル、BIPV建材。シリコンの敗戦後も、日本の部材・装置メーカーは世界のPVサプライチェーンの中で利益を上げ続けてきた。この現実の勝ちパターンを直視し、拡張する。
  • 「中国に勝つ」の再定義:「中国製品を使わない」ことと「中国に勝つ」ことを同義にしない。世界最安・最高効率のセルを調達し、日本で高付加価値のシステム・建材・サービスに仕立てて国内外に売るモデルは、排除すべき敗北ではなく検討すべき戦略の一つである。経済安全保障上の供給途絶リスクには、特定国からの調達比率の管理・備蓄・複数国調達で対応するのが定石であって、コスト2倍の国産方式を国内市場に強制することは対応として過剰かつ非効率だ。
  • ペロブスカイト研究開発:続ける。むしろ強化してよい。タンデム用トップセル、鉛封じ込め封止、長寿命化、鉛フリー組成。ここは日本の材料科学が世界と戦える領域であり、研究開発投資と量産補助は峻別する。

第三に、新技術の大量導入に先立つ物質フロー設計の義務化である。ペロブスカイトに限らず、GW級の導入目標を設定する技術には、廃棄・回収・リサイクルの制度と費用負担を導入目標と同時に法定する。シリコンで犯した「導入が先、廃棄は後」を繰り返さないための、技術中立なルールだ。

終章 「ペロブスカイト」という単語を、一度忘れる

最後に、本稿の提案を一つの手続きとしてまとめる。

研究者には、これまでどおりペロブスカイトの研究を続けてもらう。企業には量産技術を磨いてもらう。優れた成果には研究開発資金を惜しみなく投じればよい。宮坂教授の発明は日本の誇りであり、それは今後も変わらない。

ただし、政策担当者だけは、一度「ペロブスカイト」という単語を忘れてほしい。「日本発」も「ヨウ素」も「軽い」も、いったん机から下ろす。そして残った数字だけを見る。円/kWh。円/W。W/m²。kg/m²。寿命。施工費。30年LCOE。資源の賦存と価格弾力性。供給途絶リスク。国内付加価値率。世界市場規模。10年後の競争環境。

その技術中立な計算の結果、ペロブスカイトが20GW分の用途で最適解なら、20GW導入すればいい。2GWなら2GW。駅のホームと膜構造とBIPVで200MWなら、200MW。計算が「不要」と言うなら、無理に普及させる必要はない。これは技術への冷遇ではない。技術に対する最も公平な扱いである。実力で選ばれる技術は補助が切れても生き残り、政治的に選ばれた技術は補助と一緒に消える。シリコンの40年と、FITの15年が教えてくれたことだ。

ペロブスカイトが悪いのではない。ペロブスカイトを最初に答えとして決めてしまうことが、おかしいのだ。問いの順序を戻そう。「この技術をどう普及させるか」ではなく、「この社会の課題を、最も安く確実に解決する技術はどれか」。日本の太陽光政策がその問いから再出発するなら、本稿の役目は終わりである。

調査ノート:確認できた数字と、確認できなかった数字

本稿の主要な数値と出典を整理する。政策資料の記述はできる限り原数値・原資料まで遡った。リンク先は執筆時点のもの。

  • 2040年20GW目標、発電コスト15円/kWhで導入ポテンシャル約25GW、屋根・壁面150W/m²(効率15%)・窓75W/m²の推計条件、タンデム型リプレース累計66.8GW試算、発電コスト10円/kWhには累積生産80GWが必要:次世代型太陽電池官民協議会「次世代型太陽電池戦略」(2024年11月)およびスマートジャパンによる同協議会資料の解説
  • 2040年時点の発電コスト予測(ペロブスカイト15.3〜16.4円/kWh、事業用シリコン6.6〜8.8円/kWh)、稼働年数10〜15年対25〜30年、博多駅ホーム耐荷重3kg/m²、軽量シリコン架台込み約5kg/m²、日揮シート工法・PXP薄型CIGS約2kg/m²、公共部門が初期需要の3〜4割、東京都の100%補助:自然エネルギー財団「ペロブスカイト太陽電池の導入場所が広がる」(2025年10月)
  • 積水化学SOLAFIL(効率15%・耐久10年・約1kg/m²・年産10MW・2027年堺100MW・2030年1GW・総投資3,145億円・GX補助1,572.5億円):積水化学 適時開示(2024年12月26日)、同社発表(2026年3月27日)、日本経済新聞報道
  • ヨウ素の生産量・埋蔵量(チリ22,000t、日本9,300t、日本の埋蔵量490万t):USGS Mineral Commodity Summaries 2025/ヨウ素16kg/MW・価格61ドル/kg:東京大学 瀬川浩司教授の公開発言(ビジネスジャーナル2024年掲載インタビュー)/伊勢化学工業のヨウ化鉛供給体制:同社適時開示(2026年2月5日)
  • 設計荷重の枠組みと係数(風圧・積雪・固定・地震、負圧の風力係数、雪の単位荷重20N/m²/cm):JIS C 8955:2017「太陽電池アレイ用支持物の設計用荷重算出方法」
  • 軽量シリコン実在製品(Sunman eArc 2.8〜4.1kg/m²・約19.3%・2,400Pa風圧認証、AIKO系樹脂フロント約4.3kg/m²・22.5%):各社カタログ・データシート
  • 鉛量約0.75g/m²:Li et al., Nature (2020) "On-device lead sequestration for perovskite solar cells" ほか/溶出率(未封止で9割超、封止済み破損品で0.07〜0.15%):Yan et al., Solar RRL (2022, DOI: 10.1002/solr.202200332)、EES Solar (2026) の屋外暴露試験
  • 日本のシリコンPV産業史(2004年世界シェア約50%→2012年6%→現在1%未満、輸入の中国比率約8割):RIETI、産業学会研究年報、資源エネルギー庁資料、IEA "Solar PV Global Supply Chains"
  • 中国の量産動向(GCL昆山GW級タンデムライン、量産効率26.5〜28%、約0.6元/W、2026年5GW計画、2026年7月日本販売開始、UtmoLight・Microquanta、開発企業100社超):索比光伏網(2026年3月)ニュースイッチ(日刊工業新聞)、日経GX(2026年3月)
  • 効率記録(LONGiタンデムセル35.5%・モジュール31.4%、単接合シリコン27.81%、単接合ペロブスカイト27.98%):LONGi発表(2026年7月、ESTI認証)、PV Tech、NPVM認証発表
  • シリコンモジュール実勢価格約9セント/W=14〜15円/W:資源総合システム調べ(日経クロステック2026年報道)

確認できなかった数字:(1) 「通常のシリコンPVでは構造的に設置不能だが、ペロブスカイトなら風・雪・固定部を含む構造計算を通過する屋根」の全国面積の公的推計。(2) 「工場・倉庫の屋根の約4割が耐荷重不足」という流通言説の、日本の建築ストックに基づく一次調査。(3) 積水SOLAFILの販売価格(非公表)。これらが公表されれば、本稿の結論の一部は修正され得る。政府が20GWの根拠として構造工学ベースの面積推計を公表することを、改めて求めたい。

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