シンクタンクの論説と、現場の見解を同じ物差しで比べる

― 三菱総合研究所の太陽光・分散電源に関する公開文を読む ―

三菱総合研究所は、卒FIT電源、低圧太陽光の集約、FIP、系統の安定、ペロブスカイト、資源循環について、2018年から2026年10月までに多数のコラム・提言を公表しています。I-S3 は同じ主題について、設計・施工・運用の現場から公開見解を出してきました。両者の主張を同じ厳しさで一次資料と公開値に照らし、どこが一致し、どこが食い違い、食い違いの原因が何かを示します。

執筆: 益田 周防海(Suomi Masuda)/株式会社I-S3 | 公開: 2026年10月16日 | 6章+序章・終章 | 読了目安 10分(序章・終章)

六つの章 共通すること 終章

1. 序章 ― なぜ比べるのか

三菱総合研究所は、卒FIT電源、低圧太陽光の集約、FIP、系統の安定、ペロブスカイト、資源循環について、多くのコラムと提言を公表しています。政府の委託調査も手がけ、その報告書が政策文書やコラムの脚注に引かれます。I-S3 は同じ主題について、設計・施工・運用の現場から公開見解を出してきました。両者の見方はしばしば食い違います。ただ、食い違いの中身を一次資料と公開値で確かめた文章は、どちらの側にもありませんでした。

そこで、相手の文章を原文と原本で読み、同意できる点を先に書き、対象・時点・単位・費用の払い手を揃えてから比べます。数字はすべて公開値で、計算の入力と式は本文に示します。I-S3 の意見は、検証とは別の枠に、益田周防海の署名で書きます。書いた人の動機や能力は推し量りません。I-S3 自身の公開ページにあった誤り(発電コスト検証WGの2040年コスト値の表記、FIP認定比率の出典と分母)は、各章で明記し、該当ページを訂正しました。双方の利害は各章の末尾に書いています。

2. 六つの章

章主題取り上げる文章一行で
第1章 卒FIT電源の継続コスト ― 全面更新か、部分更新か 三菱総合研究所 柴田康智氏 コラム(2026-06-04) 「卒FIT後の7〜10円にパネル更新費を加えると厳しい」。原本はパネル更新を含まない。不良モジュールだけを替えるなら、原価は原本の帯から出ない。
第2章 低圧既設の品質評価 ― 取得前のDDか、取得後の運用か 三菱総合研究所 伊藤綾子氏 コラム(2026-06-03) 「集約には取得前の安価なDD評価が要る」。取得価格は発電実績を見て相対で決まる。取得前にいくら評価しても「どのモジュールが劣化しているか」は出てこない。
第3章 FIP移行の価値 ― 市場統合の手段は機能したか 三菱総合研究所 FIP関連コラム4本(2024-10〜2026-09) 「市場統合の潮流に備えよ」。目安25%に対して実績3%。移行を進めるためにFIT側の不利益と上乗せが要った。低圧はFIPを選べなかった。
第4章 系統安定・レジリエンスの単位 ― 系統・配電事業か、需要家・ノードか 三菱総合研究所 系統・分散電源 公開文6本(2023-03〜2026-10) 「安定化機能は市場で調達し、需要側は束ねて調整力に」。慣性・GFM・配電事業では一致。束ねた制御面がリスクという論点だけが相手側に無い。
第5章 ペロブスカイト産業政策 ― 量産投資支援か、技術中立の成果目標か 三菱総合研究所 伊藤陽人氏・井上智裕氏 コラム(2026-03-16) 「国が導入目標・市場・量産投資・海外展開を一体で支えれば勝てる」。10円到達に要る80GWの4分の3は海外。国内目標20GWを上下させても習熟に効かない。
第6章 パネル再流通と資源循環制度 ― 再使用できるモジュールを分ける基準はあるか 太陽電池廃棄物法・環境省ガイドライン(三菱総合研究所の公開見解なし) 法は「廃棄物となった後」を起点に再資源化へ重心を置き、再使用は努力義務と省令待ちの判断基準。良品のモジュールを分ける基準はまだ無い。

第5章は別稿「ペロブスカイトを、一度忘れよう。」と対になっています。

3. 六つの章に共通すること

六つの章を通して読むと、相手側の文章には一つの共通した前提があります。評価も、安定も、収益も、廃棄も、系統の中央(系統運用者・市場・集約主体・アグリゲーター・クラウド)で束ねて調達し、制御し、処理するという前提です。発電所を一つの塊として全面更新の原価で評価する(第1章)、取得前のDDで案件を選別して集約する(第2章)、全電源を市場に束ねる手段としてFIPを置く(第3章)、安定化機能を市場で調達し需要側を束ねて調整力にする(第4章)、国が導入目標・市場・量産投資・海外展開を一体で支える(第5章)、撤去したモジュールを排出→回収→再資源化の一本の流れに乗せる(第6章)。

一方で、分散電源と蓄電池は、現場で測り、現場で応え、現場で直せる設備になりました。モジュール単位の出力は運転中に測れ、周波数と電圧のずれはその場で応えられ、不良モジュールだけを外して良品を次の設備に回せます。各章では、この前提と実物の間に何があるかを、形容詞ではなく数字と制度の経緯で示します。

4. 双方の利害と、相手側への掲載の申し出

株式会社I-S3 は太陽光発電の設計・施工・O&M・リパワリング・中古パネルを用いた自家消費/オンサイトPPAを事業とし、株式会社浜屋とフィリピン向け中古パネル再利用事業(Amber Horizon Energy、設立準備中)を共同で推進しています。既設太陽光の継続運転・リパワリング・中古パネル再利用・現場側への投資が広がることはI-S3 の事業機会になります。このシリーズはその利害の下で書かれています。三菱総合研究所は、各章で引く公開文の中で、太陽光発電事業への参画とアセットマネジメント、画像によるDD評価サービスの想定、出力制御評価サービス、系統安定化の事業機会、FIP収益の確率評価、併設蓄電池の最適運用シミュレーションを自ら開示しており、集約・市場統合・系統側調達・量産支援が広がることは同社の事業機会になります。利害があることをもって主張を退けるのではなく、個々の数値・契約・法令で検証されることを求めます。

各章で取り上げた文章の著者・発行者には、同じ分量で反論を掲載する用意があります。誤りの指摘は出典とともに受け付け、訂正は日付を付けて各章に残します(連絡先: s_masuda@i-s3.com)。

5. 終章 ― 束ねる前提と、現場で測れる実物

六つの章で見てきた食い違いは、個々の数値の正誤ではなく、どこで測り、どこで応え、どこで直すかの置き方の違いに帰着します。

卒FIT電源の原価は、発電所を一つの塊として全面更新で置けば成り立たず、モジュール単位の部分更新で置けば原本の帯から出ません。既設低圧の取得価格は発電実績を見て相対で決められ、「どのモジュールを替えるか」は取得後に運転しながら測るほかありません。FIPは、政府自身の目安25%に対して2年9か月で3%にとどまり、移行を進めるためにFIT側の不利益と上乗せが要りました。低圧はそもそもFIPを選べませんでした。系統の安定は、慣性・短絡容量の調達では両者が一致し、束ねた制御面そのものがリスクであるという論点だけが相手側の文章にありません。ペロブスカイトは、10円到達に要る累積80GWの4分の3を海外で売る必要があり、国内目標を上下させても習熟に効きません。太陽電池廃棄物法は「廃棄物となった場合」を起点に設計され、再使用できるモジュールを分ける基準はまだありません。

これらに共通するのは、分散電源と蓄電池が現場で測り、現場で応え、現場で直せる設備になった後も、評価・安定・収益・廃棄を中央で束ねる前提の制度と論説が続いている、という事実です。前提が実物に負けている箇所は、各章の数字が示しています。

意見前提の置き方について

分散電源と蓄電池の時代に、中央で束ねる前提のままでは、発想が貧困と言われてしまう恐れがあります。私がそう言うのではなく、各章の数字がそう言わせます。目安25%に対して3%。取得前にいくら調べてもモジュールの劣化は出てこない。80GWのうち60GWは海外。これらは制度や論説を書いた人の能力の問題ではなく、前提の置き方の問題です。前提を実物に合わせれば、答えは現場にあります。安定は現場で、取引は束ねて。良品は次の設備へ、不良だけを外して。それで足ります。

益田 周防海(株式会社I-S3 代表取締役)

6. 今後の更新と訂正履歴

政府資料の更新(FIP比率、発電コスト検証WGの改訂、省令の制定)、相手側の新しい公開文、I-S3 自身の実測の公開に応じて改訂します。改訂箇所と日付は各章に残します。三菱総合研究所が受託した使用済パネル実態調査(環境省、2026年度)の成果が公表された時点で、第6章を照合します。

引用や要約に誤りがあれば、出典とともに s_masuda@i-s3.com へお知らせください。訂正は日付を付けて本文に残します。引用元の方からの反論は、同じ分量で掲載します。

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益田 周防海(Suomi Masuda Ph.D.)/株式会社I-S3 代表取締役