1. 三菱総合研究所の公開見解は無い。相手は制度
三菱総合研究所の公開文に、太陽光パネルの再使用(リユース)を論じたものはありません。資源循環の署名記事はリチウム蓄電池・循環戦略・二次資源回廊で、提言の資源循環はプラスチックと蓄電池です。同社は環境省の令和8年度「使用済太陽光パネルの排出・処理実態調査」を受託しており(公募 2026年7月)、業務目的は法施行に向けた政省令・基本方針・認定ガイドライン等の制度設計のための実態把握とされています。成果は未公表で、再使用に関する設問の有無は分かりません。
そこでこの章では、法律・省令・ガイドラインそのものを相手に、再使用できるモジュールを再資源化の流れから分ける基準があるかを確かめます。受託成果が公表された時点で、再使用の扱いを照合します。
2. 法の定義(条文のみ)
太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律(令和8年法律第33号、2026年6月5日公布)は、「太陽電池」を、板状でガラス部品を持ち政令重量以上の機器で、廃棄物となった場合に再資源化等が技術的・経済的に可能なもの、と定めます(第2条第1項)。「太陽電池の廃棄」は、太陽電池を太陽電池廃棄物(廃棄物処理法上の廃棄物)とするとともに処分方法を選択して排出すること(同第3項)。「再資源化」は、太陽電池廃棄物の全部または一部を部品・原材料・製品の一部として利用できる状態にすること(同第5項)です。
つまり法は「廃棄物となった後」を起点に設計されています。撤去したモジュールがいつ廃棄物になるかは、この法ではなく廃棄物処理法の総合判断(物の性状・排出の状況・通常の取扱い形態・取引価値の有無・占有者の意思。環境省通知 2021年4月14日)に委ねられ、判断は都道府県等が行います。環境省のガイドライン(第三版、2024年8月)は、廃棄物処理の手続きを取る前にリユース可否の判断を依頼することが望ましい、としています。
3. 法の中の「再使用」
| 条 | 内容 | 強さ |
|---|---|---|
| 第1条 | 目的に「太陽電池の廃棄の抑制」 | — |
| 第6条 | 太陽電池廃棄者は「長期間の使用及び再使用その他の…量の抑制のために必要な措置」に努める | 努力義務 |
| 第7条第1項第1号 | 事業用太陽電池廃棄者の判断基準(主務省令、未制定)に「長期間の使用及び再使用その他の…量の抑制のための措置に関する事項」を定める | 省令で中身が決まる |
| 第8条 | 判断基準に基づく指導・助言 | 指導・助言 |
| 第9条第5項 | 多量廃棄者への勧告・命令は再資源化等の実施に係る判断基準(第7条第1項第2〜5号)に照らす | 再使用(第1号)は勧告・命令の対象外 |
| 第18・19条 | 製造業者は長寿命化等の設計、販売業者は「長期間の使用及び再使用」の情報提供に努める | 努力義務 |
| 附則第4条 | 排出量見込み・再資源化の選択状況・最終処分場・費用推移を勘案し、「廃棄物とする太陽電池の量の抑制」の義務付け等を検討 | 見直し規定 |
再使用は、努力義務・判断基準の一項目・情報提供・見直し規定として法の中にあります。届出・認定・廃棄物処理法の特例・勧告・命令という規制の装置は、すべて再資源化の側に置かれています。再使用できるモジュールを再資源化の流れから分ける基準は、法にも、未制定の省令にも、まだありません。法が再使用を否定しているという意味ではなく、重心と義務の強さが違う、という意味です。
法の参考資料は、排出量を2030年代後半に年間最大約50万トン、専用リサイクル施設を87件・年13万トン(2025年11月、8府県に無し)とし、「6割以上の太陽光発電事業者は実質的にリサイクルを検討していない」としています。量の桁からすれば、再資源化の体制が要ることに異論はありません。I-S3 の主張は「再資源化が不要」ではなく「良品のモジュールを破砕しない」です。
4. 制度が想定する再使用と、I-S3 の取引形態
環境省「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」(2021年5月)は、リユース品の条件を、発電性能(発電実績記録または保守点検記録、無ければ性能検査)と絶縁性(目視検査記録または絶縁性能検査)とし、売手がこれらの記録を求めに応じて提出できる状態にすることを求めています。個体を売買する取引を前提にした条件です。
I-S3 の取引形態はこれと異なります。I-S3 は中古モジュールを個体の性能証明付きで売りません。MLPE設備に組み込み、モジュール単位で監視しながら運用し、設備としての発電量を保証します(中古パネルFAQ、事例)。顧客が受け取るのは個体の証明書ではなく、発電量の保証と運用監視です。制度の枠で言えば、I-S3 は「リユース品の売手」ではなく「設備の施工・運用者」で、個体の性能リスクは保証(契約)でI-S3 が引き受け、個体の異常は運用中に検出して交換します。安全(絶縁等)は設備単位の技術基準と目視除外で担保します。
この形態と制度の接点は二つ残ります。一つは、I-S3 が中古モジュールを引き取る時点の廃棄物該当性です。有償で引き取り自社設備で発電させる「利用の事実」はありますが、引き取り時点の品質管理の証跡が無いため、都道府県の判断が割れる余地があります。もう一つは、第7条第1項第1号の判断基準(省令)が「検査済みリユース品への譲渡」だけを再使用の措置として数えると、設備運用者への譲渡が数えられない可能性です。省令案の意見募集で、設備の発電量保証と運用監視による再使用を措置の例示に加えるよう求めるかは、I-S3 の判断事項になります。
モジュール単位の実物。20年を過ぎたパネルの大半は発電能力を維持し、出力低下の相当部分は回路側の損失です(第1章)。モジュール単体の劣化は事業規模では取得できず、回路を細かく分けて運転しながら測る以外に「どのモジュールを替えるか」を決める手段はありません(第2章)。この実物の上では、発電所は「全部まとめて廃棄物になる」のではなく、不良モジュールだけが外れ、良品は次の設備へ、架台・ケーブルは再資源化へ、と分かれます。法の定義が「廃棄物となった場合」を起点に置く限り、この分かれ目は制度の外側で起きます。
5. 意見と立場
意見良品を破砕しないことについて
I-S3 は中古パネルを、検査済みのリユース品として売ることはしません。MLPEで運用し、設備としての発電量を保証するのが私たちの商売です。個体の記録を相手に渡すこともありません。性能のリスクは保証で私たちが持ち、異常は運用の中で見つけて替えます。
20年を過ぎたパネルの大半は、まだ発電しています。それを発電所ごと「廃棄物」として一本の流れに乗せる前提は、モジュール単位で見ている実物と合いません。再資源化の体制は要ります。ただ、良品を破砕するのは資源循環ではありません。
益田 周防海(株式会社I-S3 代表取締役)
立場双方の利害
I-S3。中古パネルを用いたリパワリング・自家消費設備の施工と、フィリピンでの再活用事業(準備中)を行っており、再使用が制度上認められるほど利益を得る立場です。
三菱総合研究所。環境省から本法施行に向けた使用済パネルの排出・処理実態調査を受託しており(2026年度)、成果は未公表です。受託成果が公表された時点で照合します。
未確認確かめられていないこと
- 施行日政令・判断基準省令・政令重量はいずれも未制定・未確認です。
- 環境省ガイドライン第三版の「リユースに向けて実施する検査等のコスト感」は扱っていません。
- フィリピン事業の輸出形態(I-S3 側が運用するか、個体を売るか)は準備中です。
- I-S3 の保証条件の詳細・件数は非公開です。
6. 出典
- 太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律(令和8年法律第33号)e-Gov法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/508AC0000000033
- 環境省「太陽電池廃棄物の再資源化等の推進に関する法律案について(参考資料)」2026年4月(排出量・施設数・事業者の検討状況) https://www.env.go.jp/content/000390689.pdf
- 環境省「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」2024年8月(2-3 リユース可否判断、第4章、図表47 廃棄物該当性の判断要素) https://www.env.go.jp/content/000245687.pdf
- 環境省「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」2021年5月(リユース品の条件) https://www.env.go.jp/content/900517773.pdf
- 三菱総合研究所 公募「令和8年度 使用済再生可能エネルギー発電設備のリサイクル等の推進に係る調査・検討業務」2026年7月24日 https://pubpjt.mri.co.jp/publicoffer/20260724.html
- I-S3「中古パネル・リユース FAQ」 https://www.i-s3.com/faq/used-panels.html
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自分の発電所の数字で置き直す
認定年度・出力・パワコンの設置年・売電か自家消費かが分かれば、継続運転・部分更新・MLPE化の論点を整理できます。
益田 周防海(Suomi Masuda Ph.D.)/株式会社I-S3 代表取締役