質問主意書 素案——政府の認識を問う 19 問

系統連系技術要件ガイドライン改定案(JC-STAR★1 要件化、e-Gov 案件番号 620340012)について、国会議員が内閣に文書で質問するための素案を公開する。答弁書は閣議決定を経た公文書になる。「政府として承知していない」「検討中である」という答弁であっても、その日付で、何が問われ、何が答えられなかったかが残る。党派に関わる語は入れていない。どの議員が提出しても、どの問を削っても使える。

益田 周防海(Suomi Masuda)/株式会社I-S3 | 2026年10月17日 | CC BY 4.0

質問は七つの節に分かれる。核は第一節(脅威モデル・効果の見積・代替措置との比較が存在するか)と第三節(一つの認証情報・一つのファームウェア配信系統・一つの遠隔制御面から同時に動く容量に上限を置いたか)である。いずれも、資源エネルギー庁と IPA が 2026 年 7 月に当社へ文書で回答した内容を前提にしており、問いの一つ一つが公開資料で裏づけられる。改定案の施行は 2027 年 4 月 1 日。施行前に答弁書が出れば、設計時点で政府が何を評価し、何を評価していなかったかが公文書で確定する。

使い方

テキストで取得

各問が何を確定させるか

節問答弁で確定すること根拠
一 脅威モデルと効果1〜3脅威モデルの有無と公表予定。★1 による低減量の見積の有無。代替措置と比較せずに接続条件にした判断の是非資料 4、エネ庁回答 2026-07-30
二 ラベルの効力4〜6製品ラベルが設備の到達可能性を示さないという IPA 回答を政府が共有するか。風力だけに「同等の機能」を認めた理由IPA 回答 07-19・07-26、グリッドコード検討会第 21 回
三 同時到達容量7〜9一件の侵害で同時に動く容量の上限・報告を検討したか。供給者の集中度を評価したか。最低運転点・変化率を確認項目にしたかNERC CIP-002-5.1a、意見 6(受付番号 620340012420402491)
四 対象の画定10〜11IP/非 IP の画定が外部到達可能性に基づくか。2024 年 5 月事案から全 IP 機器ラベル要求を導いた論理エネ庁回答 Q2〜Q4・Q9・Q22、資料 4 p.4
五 既設・交換・猶予12〜15同一型式交換に接続検討を課す理由。復旧遅延の影響評価。一般送配電 10 社の判断の統一。2026 年 3 月末基準日の予見可能性改定案 5(2)、エネ庁サイト FAQ、エネ庁回答
六 法令上の根拠16〜17技術基準にない義務を約款別冊で課す電気事業法上の根拠。約款認可手続での第三者意見の機会。根拠資料の公表予定資料 4、行政手続法第 39 条
七 事後の責任と記録18〜19広域供給支障が起きた場合の説明責任の果たし方。照会・意見・回答の受領記録の保持—

素案 全文

分散型電源に対するサイバーセキュリティ適合ラベル(JC-STAR)の系統連系要件化に関する質問主意書

経済産業省資源エネルギー庁は、二〇二六年十月六日、「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」の改定案(e-Gov 案件番号 620340012。以下「改定案」という。)について意見公募を開始した。改定案は、二〇二七年四月一日以降に系統連系する太陽光発電設備、蓄電設備等のうちIP通信機能を有する機器に対し、独立行政法人情報処理推進機構(以下「IPA」という。)が運用するセキュリティ要件適合評価及びラベリング制度(以下「JC-STAR」という。)の★1 適合ラベルの取得を求めるものである。

分散型電源のサイバーセキュリティは電力の安定供給に直結する課題であり、要件の設計が適切でなければ、対策を講じたという外形が整う一方で、実際の侵害に対する系統の耐性が改善しない、あるいは悪化するおそれがある。要件が施行された後に広域の供給支障が生じた場合、要件を設計した行政、要件を根拠に製品を供給した事業者、要件を接続条件として適用した一般送配電事業者のいずれにも、設計時点で予見できた点について説明が求められる。以下、政府の認識を質問する。

一 脅威モデルと効果の評価について

  1. 改定案の根拠資料である第十三回次世代電力系統ワーキンググループ資料四は「インターネット等に直接露出していない場合であっても、IP通信機能を有する以上、外部からの侵入等のリスクが存在」と述べている。政府は、改定案が対象とする分散型電源に対して、想定する攻撃者、侵入経路、侵害された場合に系統に生じる影響の規模を記述した脅威モデルを作成しているか。作成している場合、その文書名と、意見公募の結果公示までに公表する予定の有無を示されたい。
  2. ★1 適合ラベルを取得した製品を系統連系の条件とすることによって、分散型電源が外部から不正に操作される確率、又は不正操作が成立した場合に同時に影響を受ける容量が、どの程度低減すると政府は見積もっているか。見積もりを行っていない場合、その理由を示されたい。
  3. 資源エネルギー庁は二〇二六年七月三十日付の事業者宛て文書回答において、境界防御やIEC 62443 等の代替措置と★1 ラベル要件とを比較評価した資料は「ございません」と回答している。政府は、代替措置との比較評価を行わずに特定の適合ラベルを接続条件とした判断は、要件の合理性の説明として十分であると考えているか。

二 ラベルの効力の範囲について

  1. IPAは二〇二六年七月付の文書回答において、JC-STARは「対象とする『機器』に対して『境界防御』という考えは導入して」おらず、「ラベル取得製品をどの場所に設置するのかによってラベルの効力が変わることはありません」、「『適合ラベル取得済み』は、『安全に設置・運用されている』ことではな」いと回答している。政府は、製品単体の適合ラベルが、当該製品を含む発電設備が外部ネットワークから一斉に操作され得る構成であるか否かを示すものではないという理解を共有しているか。
  2. 右の理解を共有している場合、系統の安定供給の観点で問題となるのは個々の製品の仕様ではなく設備全体の到達可能性であるにもかかわらず、改定案が製品単体のラベルのみを接続条件とした理由を示されたい。
  3. 改定案は風力発電設備についてのみ「ゲートウェイ等のファイアウォール機能又はこれと同等の機能を有する機器」を対象とし、太陽光発電設備及び蓄電設備については個々の機器を対象としている。第二十一回グリッドコード検討会資料によれば、風力をゲートウェイに限定した理由は海外メーカー製機器が多く対応に時間を要するためとされている。政府は、同一の脅威に対して電源種により要件の構造を変えることが、サイバーセキュリティ上の合理性に基づくものであると考えているか。供給事情に基づくものである場合、太陽光発電設備及び蓄電設備において同等の構成(ゲートウェイによる境界防御)を適合経路として認めない理由を示されたい。

三 同時到達容量(一件の侵害で動く容量)について

  1. 米国北米電力信頼度協議会(NERC)の基準CIP-002-5.1a は、一つのサイバーシステムが制御する発電容量(千五百メガワット、三千メガワット)によって影響度等級を定めている。政府は、一つの認証情報、一つのファームウェア配信系統、又は一つの遠隔制御面から同時に操作され得る分散型電源の容量について、上限を設ける、又は報告を求める規定を改定案に置くことを検討したか。検討していない場合、その理由を示されたい。
  2. 日本独自の適合ラベルを接続条件とすることにより、国内で供給される分散型電源用機器の供給者が絞られ、同一のファームウェア配信系統に属する容量の集中度が高まる可能性について、政府は評価を行っているか。
  3. 遠隔命令によって機器が到達し得る最低運転点(出力の下限)及び出力変化率の制限は、侵害が成立した場合の系統への影響を直接に抑える手段である。政府は、これらを系統連系時の確認項目とすることを検討したか。

四 対象機器の画定について

  1. 資源エネルギー庁は前記文書回答において、IP通信機能を有するがIP通信を使用しない機器(ポート未結線、設定による無効化、出荷時の恒久無効化)はいずれも要件の対象であると回答する一方、非IP通信(RS-485 等)で接続された機器は対象外であると回答している。この結果、外部到達経路を持たない機器が対象となり、RS-485 経由で外部通信する汎用機器に接続された構成が対象外となる。政府は、この画定が外部からの到達可能性に基づくものであると考えているか。
  2. 二〇二四年五月に国内で発生した太陽光発電監視装置の踏み台化事案について、政府は、当該機器が出力制御機能を有していたか、及び系統への影響があったかを把握しているか。把握している場合、当該事案への対策として全IP機器への製品ラベル要求が必要であると判断した論理を示されたい。

五 既設設備・機器交換・猶予について

  1. 資源エネルギー庁ウェブサイトは、既設設備における同一機器への交換も「軽微な変更」には当たらないとしている。政府は、同一型式の機器交換が電圧、周波数、力率、保護協調のいずれにも変化を生じないことを認識しているか。認識している場合、電力品質の確保を目的とするガイドラインの枠組みで当該交換に接続検討を課す理由を示されたい。
  2. 故障機器の交換に接続検討(回答期限最長三か月)が課されることにより、既設の分散型電源の復旧が遅れ、供給力の回復が遅延する影響について、政府は評価を行っているか。資源エネルギー庁は前記文書回答において既設設備・経済的不利益への影響評価資料は存在しないと回答しているが、意見公募の結果公示までに影響評価を行う予定はあるか。
  3. 改定案は「過度な負担が生じると属地の一般送配電事業者が認める場合」に猶予を認めるが、判断基準、標準期間、了承が得られなかった場合の不服申立て先はガイドライン本文に定められていない。政府は、一般送配電事業者十社の間で判断が異なる事態をどのように防ぐ考えか。
  4. 資源エネルギー庁ウェブサイトは猶予の例示として「二〇二六年三月末まで」に締結した延長保証契約等を挙げている。意見公募中の規則を根拠に、確定前の過去の時点を基準日として事業者の判断を遡って不利に扱うことについて、政府は予見可能性の観点から問題がないと考えているか。

六 法令上の根拠と手続について

  1. 五十キロワット未満の一般用電気工作物については「電気設備に関する技術基準を定める省令」にサイバーセキュリティに関する規定が存在しないと資料四自身が述べている。技術基準で課されていない義務を、一般送配電事業者の約款別冊を通じ、接続拒否という事実上の強制力をもって課すことの電気事業法上の根拠を示されたい。
  2. 本意見公募は行政手続法第三十九条に基づく命令等の意見公募ではなく任意の意見募集として実施されており、実効的な規範は各一般送配電事業者の約款別冊の認可を通じて置かれる。政府は、約款別冊の認可手続において第三者が意見を述べる機会を設ける考えはあるか。ない場合、要件の根拠資料(脅威モデル、比較評価、効果の見積もり)を意見公募の結果公示と同時に公表する考えはあるか。

七 事後の責任と記録について

  1. 改定案の施行後、★1 適合ラベル取得製品を用いた分散型電源において、同一ファームウェア系統又は同一制御面の侵害を原因とする広域の供給支障が生じた場合、政府は、要件設計時に代替措置との比較評価及び同時到達容量の評価を行わなかったことについて、どのように説明責任を果たす考えか。
  2. 政府は、本質問主意書の各項目に係る事業者からの照会、意見公募への意見、及びそれらへの回答を、いつ、どの部署が受領したかを記録として保持しているか。

右質問する。

素案の本文は自動翻訳の対象外にしてある(他言語表示でも日本語のまま)。

この文書が言わないこと

特定の政党や議員に提出を求めるものではない。要件化に反対の立場を取るよう求めるものでもない。問いはすべて「政府は評価したか、していないか」「資料はあるか、ないか」を確かめる形にしてあり、答えがどちらであっても記録として意味を持つ。改定案への意見は意見公募(2026 年 11 月 6 日まで)で別に出せる。

出典

益田 周防海(Suomi Masuda)/株式会社I-S3。公開資料と受領した回答文に基づく。法的助言ではない。素案は CC BY 4.0 で、出典表示のうえ自由に改変・利用できる。