「個別性の高い事業は制度的に排除しにくい」は支援対象から外す理由になるか

― 執行の難しさと支援の線引き ―

2026年7月28日の再生可能エネルギー主力電源化小委員会 第3回で、複数の委員が「地域にどのような便益をもたらすかという積極的な側面からも基準を検討されたい」「自治体の実質的な関与を評価すべき」と求めた。事務局はこれに対し、FIT/FIPは類型に応じた面的支援であり、個別性の高い事業を含めると問題のある事業を制度的に排除しにくい、と答えた。本記事はこの回答の論理を、議事要旨の原文と再エネ特措法の既存の執行手段に照らして検証する。

執筆: 益田 周防海(Suomi Masuda)/株式会社I-S3 | 公開: 2026年10月13日 | 検証対象: 資源エネルギー庁 事務局回答(第3回小委)(2026-07-28) | 分類: P5 執行の難しさを除外の理由にする / P4 属性で性能を代理

検証 対象と引用 論法の分類へ

この記事の書き方
対象は、URLと日付で特定できる公開の論説・発言に限る。引用は原文どおりで、発言者の所属・役職は発言時点のものを出典どおりに記す。検証するのは論証と事実認定であり、発言者の動機や人柄、所属組織の是非には触れない。同意できる点は同意できると書く。引用元の方から反論・訂正の申し出があれば、同じ分量を本文に掲載する(連絡先: s_masuda@i-s3.com)。分類は人物ではなく論法で行い、一覧は分類ハブにある。

1. 検証の対象

会議総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会/電力・ガス事業分科会 再生可能エネルギー主力電源化小委員会(第3回)令和8年7月28日
発言主体事務局(資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 新エネルギー課)。議事要旨は「事務局より回答」とのみ記し、個人名は記載しない。本記事も個人名は扱わない。
文書議事要旨 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/003_gijiyoshi.pdf
論法の分類P5 執行の難しさを除外の理由にする P4 属性で性能を代理
「地域における便益を評価できないのかといった御指摘について、やはりFIT/FIP制度は、一定の類型に応じて面的に支援をしていくものであり、個別性の高い事業を対象に含めると、仮に地域との関係で問題が生じうるようなものが含まれてた場合に制度的に排除しにくい。こうした個別性の高い事業については、より優れた点をポジティブに評価できる補助金のような支援が適している。」 議事要旨「(事務局より回答)」。委員側の意見として同要旨は「地域共生を『問題が生じにくい』という消極的な側面だけでなく、地域にどのような便益をもたらすかという積極的な側面からも基準を検討されたい」「自治体の関与について、形式的な出資や用地貸与だけでなく、事業計画策定への関与やモニタリング体制など、実質的な関与を評価すべき」を記録している。
「地域共生の考慮要素(aとb)は現状OR条件であると念頭に置いているが、御意見を伺って検討していきたい。」 同上。a・bは資料で示された「地域の主体が関与」「地方自治体が関与」の二要素。

2. 検証

「排除しにくい」は誰の仕事か P5 執行の難しさを除外の理由にする

事実認定。再エネ特措法には、認定事業者に対する指導・助言、改善命令、認定の取消しという段階的な執行手段があり、2024年4月からは一定の事業に説明会の実施が認定の要件になっている。問題のある事業を「排除」する仕組みは、支援対象の類型とは別に、既に法律の中にある。

論証。事務局回答は「問題が生じうる事業が含まれた場合に排除しにくい」ことを、類型を狭くする理由にしている。しかし、類型を狭くしても、類型に入った事業の中で問題が生じる可能性は残り、それを排除するのは結局、執行手段である。逆に、類型に入らなかった事業の中に問題のない事業があることは、類型では救えない。排除のしやすさは執行手段の設計で決まる問題であり、支援対象の線引きで解く問題ではない。線引きで解こうとすると、問題のない事業を広く巻き込む代わりに、問題のある事業を確実に外せるわけでもない、という結果になる。

「類型」は属性でしか作れないか P4 属性で性能を代理

論証。事務局回答の前提は「面的支援=属性による類型」である。しかし類型は属性でなく設備の性能でも作れる。急速停止や遠隔遮断の実装、監視による出力・絶縁の記録、排水・造成に関する技術基準の適合、点検記録の提出といった要件は、いずれも一件ごとの個別審査なしに、要件の有無で面的に判定できる。実際、FIT/FIPの認定要件には既に事業計画策定ガイドラインへの適合や保守点検の実施など、設備と運用に関する要件が含まれている。性能による類型は「個別性の高い事業」ではなく、「要件を満たす事業」の集合であり、事務局回答が避けようとした個別審査を必要としない。

同意できる点。「より優れた点をポジティブに評価できる補助金のような支援」が、個別性の高い便益(たとえば地域新電力への供給や防災拠点化)に向いているという指摘には同意する。弊社の反論は「補助金を併用すること」にではなく、「FIT/FIPの類型は属性でしか作れない」という前提に向けている。

OR条件の意味

a(地域の主体が関与)または b(地方自治体が関与)のどちらかを満たせば「地域共生型」になる。この条件は、関与する主体の属性だけで決まり、関与の実質(計画への参加、モニタリング、問題発生時の対応)を問わない。委員が「形式的な出資や用地貸与だけでなく…実質的な関与を評価すべき」と述べたのはこの点であり、事務局も「検討していきたい」と答えている。実質を評価するなら、評価の物差しは結局、運用と性能の記録になる。

3. 公開質問との関係

弊社は2026年10月13日に資源エネルギー庁へ送った17項目の公開質問で、評価軸(国自身が示した安全性・地域影響の観点)と選別方法(土地の所有者・行政関与)の不一致を問うている(質問1〜4)。本記事で検証した事務局回答は、その不一致が生まれた理由の一端を示している。回答が届けば、全文を公開質問の記事に掲載し、本記事の記述も必要に応じて訂正する。

事実各記事で共通に使う一次資料の数字

  • 2026年度の低圧(10kW以上50kW未満)地上設置のFIT調達価格は10円/kWh。2027年度以降、地上設置は新規のFIT/FIP支援の対象外(「地域共生型」の類型を除く)。― 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月5日)
  • 同意見書の想定システム費用は、低圧 17.8万円/kW、それ以外の地上設置 11.3万円/kW。低圧は約1.6倍。― 同上
  • FIP認定の太陽光は2024年12月末で938MW・1,563件、2025年3月末の太陽光FIT/FIP認定容量の1.4%。― 再生可能エネルギー主力電源化小委員会 第5回 資料1
  • 2032〜2036年度にFIT買取期間を終える太陽光は約2,900万kW・約46万件。― 同上

出典URLは各記事末尾の一覧に記す。

5. 出典

  1. 再生可能エネルギー主力電源化小委員会(第3回)議事要旨、令和8年7月28日 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/003_gijiyoshi.pdf
  2. 同小委員会 第5回 資料1 https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/saiene_shuryoku/pdf/005_01_00.pdf
  3. 調達価格等算定委員会「令和8年度以降の調達価格等に関する意見」(2026年2月5日) https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/20260205_1.pdf

読者が次に取れる行動

  • 引用元の原文をURLから読み、本記事の引用と要約が正確かを確かめる。相違があれば s_masuda@i-s3.com へ知らせてほしい。訂正は日付とともに本文に残す。
  • 自分の設備が「地上設置・10kW以上」に当たる場合、2027年度以降の増設・更新・FIP移行の扱いは公開質問の記事の「決定済みの事実」で確認できる。

自社設備への影響を、資料から整理する

認定年度・区分・出力・現在の調達価格と、増設や更新の予定が分かれば、2027年度以降の扱いの論点を整理できます。

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益田 周防海(Suomi Masuda Ph.D.)/株式会社I-S3 代表取締役