求めてよいのは、外から制御点(その機械を遠隔で動かす地点)へ届かないこと、通信が切れてもその場で安全側(発電を止める側)に止まれること、それを設備のつなぎ方で示すことだ。JC-STARという日本のラベルの★1(星一つ)が付いた箱でなければ電力網につなげない、という一文は、その代わりにならない。
この文書が言うこと
JC-STARは、独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)が付けている、ネットにつながる製品向けの適合ラベルです。★1はその一番下の段です。家電や通信機器を含む、広い製品のための最低ラインとして作られていて、発電設備を電力網につなぐためだけに作られた基準ではありません。これはIPA自身が、2026年7月の公開質問への回答で書いています。
資源エネルギー庁は、送配電を担う会社(一般送配電事業者。電気料金の窓口とは別の、電線と変電所を管理する会社)が定める「電力網につなぐための条件」を2026年度内に改正し、契約の申し込みのときに、ネット通信のある機器へこの★1を求める、と公表しています。この条件は、国会で決めた法律ではありません。送配電を担う会社が自分の規程として書くものです。その中身は、電力広域的運営推進機関の「グリッドコード検討会」で議論されています。グリッドコードとは、発電設備を電力網につなぐときの共通ルールのことです。
この文書は、セキュリティをやめることを求めていない。大きい被害の出方を先に置き、いま書かれようとしている条件がそれを扱っていないこと、扱わないまま機器の選択だけを細くすることを、公開資料だけで示す。
大きい被害は、同時に届くことだ
一台のパワコンが基板の故障で止まるのは、その発電所の損失です。電力網全体の被害にはなりません。大きい被害は、同じ指示が、同時に、多くの発電所の制御点へ届き、多くの機械が同じ動きをすることです。火災や落雷は現場ごとにばらけます。遠隔の指示は、通信の経路がつながっていればそろって届きます。
それを小さくする方法は、巨大な仕組みをもっと硬くすることではありません。発電所ごとに判断が分かれ、隣の発電所と制御が固く結ばれておらず、通信が切れてもその場で安全側に止まれることです。届かなければ、一斉には動かせません。電力が広域でつながっていることと、制御の指示まで広域で届くことは、別です。
全員に同じ星を貼ることは、この届き方を見ていません。同じ関門を通った機械が、外から指示を受けられる経路を持ったまま残ります。星は、その経路を断つ検査ではありません。IPAの回答を、普通の言葉にするとこうです。境界で守っているかどうかは見ない。パワコン一台にラベルが付いていても、見ているのはその一台だけで、発電所全体のつなぎ方は見ません。★1は、発電所や電力網のルールのために作った基準ではありません。
ラベルは、箱が所定の項目を満たしたことを示します。その箱を置いた発電所が、遠くから一斉に動かせないことは、別の話です。入口の条件をラベルにすると、一斉に動かせる状態でも、星があればつなげます。一斉に動かせないようにしてあっても、星がなければつなげません。
書かれようとしている規則
資源エネルギー庁は、送配電を担う会社の「電力網につなぐ条件」を2026年度内に改正し、太陽光、蓄電池、風力、燃料電池のうち、ネット通信のある機器について、契約の申し込みのときにJC-STAR★1の製品を使うよう求める、と書いています。起算は、接続の検討が終わった日ではなく、契約の申し込みが受け付けられた日です。高圧・特別高圧は電圧の区分で、低圧はおおむね50キロワット未満の設備です。
| 対象 | いつから | 何を見ているか |
|---|---|---|
| 太陽光・蓄電池(高圧・特別高圧) | 2027年4月以降の契約申込み | パワコンやエネルギー管理装置など、制御する機械の★1 |
| 太陽光・蓄電池(低圧。50キロワット未満が目安) | 2027年10月 | 同上。流通在庫を理由に半年遅らせた |
| 風力 | 2027年4月 | 外部との通信の出入口(ゲートウェイ)にあるファイアウォールに、まず限定 |
| 燃料電池 | 2028年4月 | 開発と認証にそこまでかかるとされた |
すでに電力網につながっている設備へ、さかのぼってこの条件はかかりません。2027年4月以降に、ネット通信のある対象の機械を交換する場合は、原則として交換する機械に★1が要ります。エネ庁は、合わせるために他の機械まで広く替えざるを得ないなど、負担が大きすぎる場合に限り、その地域の送配電を担う会社へ計画書を出せば、ラベルのない同じ種類の製品を当面使える、と書いています。倉庫に同じ機械があっても、原則は戻せません。例外は、その計画書が通ったときの当面の措置です。
第20回グリッドコード検討会(2025年12月16日)は、太陽光と蓄電池を先に必須にする理由を、測った脅威の大きさでは書いていない。メーカーへの聞き取りで、2027年4月頃には多くのメーカーが★1対応品を供給できる見込みだから、とその資料は書いている。低圧を半年遅らせた理由も、流通在庫が残るから、である。
第21回は、風力について、外部との結節点であるゲートウェイのファイアウォール(または同等の防御)なら2027年4月に★1対応品を導入できると確認できたので、まずそこを必須にしてはどうか、と書いている。ゲートウェイ以外も、速やかに認証を取るよう求め、範囲と時期は後で議論する、とも書いている。風力が星を免除されたのではない。最初に義務にする範囲が、外との接続点に限られたのである。その限定の理由も、風力の方が危険でないからではなく、その機器なら供給が間に合うから、である。燃料電池の2028年4月も、開発と第三者認証と★1取得にそこまでかかる見込みが確認されたから、と同資料は書いている。
出典は、資源エネルギー庁「電力分野のサイバーセキュリティについて」、広域機関「第20回資料」「第21回資料」。
残るのは、選べる機械が減ることだ
星の有無が接続の可否になると、電力網への影響(電圧や周波数の振る舞い)を満たしていても、ラベルのない機械は候補から外れる。買う側の発電事業者、施工、保守は、残った供給者の価格と納期と交換部品で仕事をすることになる。国内のメーカーも、世界の他の市場にはない関門を維持する。閉じた仕様は、輸出を強くしない。
日本経済新聞は、各国で30社超が取得する一方、Huawei、Sungrow、BYD、CATLなど中国の主要メーカーは自社ブランドでの取得がゼロであり、当事者が「中国メーカーの申請は弾かれている。事実上の排除だ」と話した、と報じている(日経)。同記事は、経産省の担当者が、申請者の提出情報と政府の保有情報から総合的に判断する、と述べ、個別の却下を否定していない、とも伝えている。これは報道された発言である。裁判所が排除の意図を認定した、という意味ではない。接続条件がこのラベルである以上、取得できない供給者の機械は、危険な動きを示したからではなく、星がないから候補から外れる。
米中は二ヶ月で書き換わる。機械は残る
2026年9月23日、米財務長官ベッセントは、米中の関税とレアアースをめぐる休戦を2027年1月10日まで延ばす、と述べた。習近平氏はその週、ワシントンを訪れている。昨年10月に釜山で結んだ一年の休戦は、11月10日に切れる予定だった。ベッセントは、より大きい合意ができるかは「分からない」とも言っている。中国側が1月10日という日付をすぐ確認した、とは報じられていない。
出典はCNBC、Politico、日本経済新聞(アジア版)。農産物の買い入れも、レアアース磁石の輸出も、休戦前の約束どおりには進んでいない、と同趣旨の報道がある。交渉は、敏感でない品目を関税の対象から外す話と、まだ終わっていない話が並んでいる。技術をめぐる対立は、残ったままだ。
休戦は、延ばすことも、切れることも、また条件が変わることも前提にしています。パワコンと蓄電池は、その間に屋根と敷地へ据えられ、十年以上そこにある。電力網につなぐ条件を日本独自の星にすると、1月に交渉が緩んでも、現場の機械は候補に戻りません。交渉が厳しくなっても、星は通信の境界を見ないので、そこは埋まりません。
米国が特定の会社からの調達を止めるときは、名前を一覧に書いて、同じ手続きで外します。書いて、外せます。星を接続の条件にすると、交渉のたびに送配電を担う会社の規程を開けない限り、現場は前のままです。米中が二ヶ月単位で席に着いているときに、日本の電力網のルールだけが、二十年残る機械の関門を先に固める理由はありません。
戻す一文
改正案に、次の意味の文を置いてほしい。会社名も国名も書かない。
IP通信を使う制御機器は、外から制御点へ届かないようにし、通信が切れても、その場で安全側に停止できること。適合は、設備の構成を見て判断する。特定の国内ラベルを取得していることを、系統連系の条件にしない。既設設備で同じ機能の機器を交換する場合に、新しいラベルの取得を求めない。
取りたい会社は、JC-STARを任意の表示として続ければよいです。つなげるかどうかとは分けます。風力で最初の義務を、外部との通信の出入口に寄せたのと同じ方向を、太陽光と蓄電池の制御点にも使います。見るのは、その出入口の機械に星があることではなく、外から届かないことと、通信が切れたときに安全側で止まれることです。
この文を、資源エネルギー庁の改正担当、広域機関のグリッドコード検討会、送配電を担う会社の技術要件と接続手続きの改訂に渡してほしい。2027年4月は適用が始まる日です。条文になる前に入れるのが一番短い。入ったあとも、同じ文は使えます。
条文になったあとでも、同じ文を乗せる
一度入っても、送配電を担う会社の規程はまた直せます。固まった日は、星がないという理由で接続や交換を断る手紙が、発電所と機械の名前つきで残る日でもあります。
その手紙には、上に書いたIPAの三点と、風力の最初の義務範囲が外部との通信の出入口だったことを添えて、出した相手に戻します。この二つは改正の日を過ぎても消えません。手紙を見れば、機械が電力網にとって危険な動きで外れたのか、星がないから外れたのかが分かります。
戻す文は、毎回これで足りる。
外から制御点へ届かず、通信が切れてもその場で安全側に止まれるなら、星の有無で接続も交換も拒まないでほしい。拒むなら、その機械のどの動きが系統に危険なのかを書いてほしい。
米中の休戦は二ヶ月で延び、切れることも条件が変わることもあります。そのたびに、星を条件にした規程は動いていません。一件では規程は動きません。同じ文が、断られた発電所の数だけ積もると、星を条件にした説明の方が先に持たなくなります。改正前は条文に入れないこと。改正後は、断るたびにこの文を乗せること。どちらも、電力網につなぐ条件を、届き方の確認に戻すための同じ要求です。
他言語版: 日本語 / English / 简体中文 / 再生リスト / 出し方と論点の整理: 意見提出のお願いと手順(締切 2026年11月6日 23:59)
この文書が言わないこと
排除の意図が秘密に決められていた、という認定はしない。★1にセキュリティ上の効果が一つもない、とも言わない。個別の契約、接続拒否、訴訟の勝ち負けは扱わない。米中の休戦を2027年1月10日まで延ばす、と言ったのは米財務長官ベッセントである。中国政府が同じ日付をすぐ確認した、とはここに挙げた報道にはない。日経が伝えた「弾かれている」は、当事者の発言として報じられたものであり、司法の判断ではない。
出典
- 資源エネルギー庁「電力分野のサイバーセキュリティについて」
- 電力広域的運営推進機関、第20回・第21回グリッドコード検討会資料
- IPAセキュリティセンター技術評価部による公開質問への回答(2026年7月。引用は回答文)
- 日本経済新聞「中国蓄電池、日本のサイバー認証いまだゼロ」
- 米財務長官の発言: CNBC、Politico、Nikkei Asia(2026年9月23–24日)
益田 周防海/株式会社I-S3。公開資料に基づく。個別の契約や訴訟の助言ではない。