戻してほしいのは、これだけだ。外部から制御点へ届かないこと。通信が切れても、その場で安全側に止まれること。それを設備の構成で示すこと。JC-STAR★1を取った箱でなければ、電力系統につなげない、という一文は入れない。既設の交換にも遡らせない。
いま、条文になろうとしていること
エネ庁は、一般送配電事業者の系統連系技術要件を2026年度内に改正し、太陽光発電、蓄電池、風力、燃料電池のIP通信機器について、契約申込みのときにJC-STAR★1取得製品の使用を求める、と書いている。適用の起点は、接続検討が終わった日ではなく、契約申込みの受付日だ。
| 対象 | いつから | 何を見ているか |
|---|---|---|
| 太陽光・蓄電池(特高・高圧) | 2027年4月以降の契約申込み | PCS、EMSなど制御システムの★1 |
| 太陽光・蓄電池(低圧) | 2027年10月 | 同上。流通在庫を理由に半年遅らせた |
| 風力 | 2027年4月 | ゲートウェイのファイアウォール、または同等の防御に限定 |
| 燃料電池 | 2028年4月 | 範囲は検討中 |
出典はエネ庁の「電力分野のサイバーセキュリティについて」、広域機関の第20回グリッドコード検討会と第21回だ。第20回は、太陽光と蓄電池を先に必須にする理由を、脅威の大きさではなく「2027年4月頃には多くのメーカーで供給できる見込み」と書いている。ヒアリングで間に合う、と言われたから関門にする、という順番である。
同じ会議体が、風力ではゲートウェイの防御に限っている。太陽光のPCS一台一台に星を求める理由は、風力より危険だから、とは書かれていない。間に合う製品があるから、である。
星マークは、安全の証明になっていない
IPAは公開質問への回答で、★1は電力向けの特別な基準ではない、見る範囲は製品単体だけ、境界防御は考慮しない、と述べている。回答の整理に全文の対応がある。ラベルは「この製品を、この現場に、安全に置いて運用できる」とは書いていない。
それなのに、系統連系の入口に置くと、星の有無が接続の可否になる。任意の表示のはずのラベルが、事業を止める許可証になる。日本経済新聞は、中国の主要メーカー(Huawei、Sungrow、BYD、CATLなど)の自社ブランド取得がゼロで、当事者が「申請は弾かれている。事実上の排除だ」と話した、と報じている(日経)。同じ書類の自己適合宣言でも、通る会社と通らない会社がある。
通らない会社の機械は、性能が足りないから外れるのではない。日本のラベルが付いていないから、系統の候補から外れる。買う側の発電事業者、施工会社、保守会社は、残った供給者の価格と納期と交換部品で仕事をすることになる。国内のメーカーも、世界の市場とは別の関門を維持するコストを負う。閉じた仕様は、輸出を強くしない。
米中は二ヶ月で書き換わる。機械は残る
2026年9月23日、米財務長官ベッセントは、米中の関税とレアアースをめぐる休戦を2027年1月10日まで延ばす、と述べた。習近平氏はその週、ワシントンを訪れている。昨年10月に釜山で結んだ一年の休戦は、11月10日に切れる予定だった。ベッセントは、より大きい合意ができるかは「分からない」とも言っている。中国側が1月10日という日付をすぐ確認した、とは報じられていない。
出典はCNBC、Politico、日本経済新聞(アジア版)。農産物の買い入れも、レアアース磁石の輸出も、休戦前の約束どおりには進んでいない、と同趣旨の報道がある。交渉は、敏感でない品目を関税の対象から外す話と、まだ終わっていない話が並んでいる。技術をめぐる対立は、残ったままだ。
休戦は、延ばすことも、切れることも、また条件が変わることも前提にしている。パワコンと蓄電池は、その間に屋根と敷地へ据えられ、十年以上そこにある。系統連系の条件を日本独自の星にすると、1月に交渉が緩んでも、現場の機械は候補に戻らない。交渉が厳しくなっても、星は境界を見ないのだから、安全の穴は埋まらない。
米国が特定の供給を止めるときは、エンティティ・リストのように対象を書いて、同じ権限で外す。書いて、外せる。星を接続の条件にすると、交渉のたびに規程を開けない限り、現場は前の政治のままになる。米中が二ヶ月単位で席に着いているときに、日本の系統だけが二十年分の関門を先に固める理由はない。
戻す一文
改正案に、次の意味の文を置いてほしい。会社名も国名も書かない。
IP通信を使う制御機器は、外から制御点へ届かないようにし、通信が切れても、その場で安全側に停止できること。適合は、設備の構成を見て判断する。特定の国内ラベルを取得していることを、系統連系の条件にしない。既設設備で同じ機能の機器を交換する場合に、新しいラベルの取得を求めない。
風力で既に採っている「入口で止める」を、太陽光と蓄電池にも揃える。取りたい会社は、JC-STARを任意の表示として続ければよい。接続の可否とは分ける。構成で示す中身は、注意義務の対案に書いた。
この一文を、資源エネルギー庁の改正担当、広域機関のグリッドコード検討会、一般送配電事業者のアクセスルール改訂に渡してほしい。2027年4月は、適用が始まる日だ。条文になる前に戻すのが一番短い。なってからも、話は終わらない。
条文になったあとでも、同じ文を乗せる
系統連系技術要件は、国会で決めた法律ではない。一般送配電事業者が書く規程だ。一度入っても、また直せる。固まった日は、終わりではない。星がないという理由で、接続や交換を断る手紙が、現場に一件ずつ残る日だ。
その手紙が来たら、同じ事実を添えて、出した相手に戻す。風力は入口の防御だけにしている。IPAは、この星は電力専用ではなく、製品単体だけを見て、境界は見ない、と答えている。この二つは、改正の日を過ぎても消えない。断られた機械が、危ない動きをしたから外れたのか、星が無いから外れたのかは、手紙を見れば分かる。
戻す文は、毎回これで足りる。
外から制御点へ届かず、通信が切れてもその場で安全側に止まれるなら、星の有無で接続も交換も拒まないでほしい。拒むなら、その機械のどの動きが系統に危険なのかを書いてほしい。
米中の休戦は二ヶ月で延び、切れることも条件が変わることもある。そのたびに星の規程は動いていない。一件では規程は動かない。同じ文が、断られた発電所の数だけ積もると、星を条件にした説明の方が先に持たなくなる。改正前は条文に入れないこと。改正後は、断るたびにこの文を乗せること。どちらも、普通の技術要件に戻すための同じ正論だ。
益田 周防海/株式会社I-S3。公開資料に基づく。個別の契約や訴訟の助言ではない。